アワビ 水槽飼育法 どこよりも詳しく | Nature's Inviolable Area

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鬱蒼としたインターネットのジャングルにある秘境Nature's inviolable area。

この秘境にたどり着いた貴方は何を知り、何を発見するのか。
唯一そこには takaと言う1人の人間がいるだけであった。


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最近養殖産業が盛んになり手軽に購入できるようになったからなのか、アワビの水槽飼育の相談が以前から多く来ていた。

確かにいざ検索しても養殖業の話ばかりで、一切水槽飼育の記事は無い。

僕はもう17年以上アワビを水槽飼育しているが、コレほど情報が世間に無いと思っていなかったので記事にします。

 

 

まあ海が好きなら絶対楽しいはずです。

 

 

飼育のお話の前に、

 

まず、アワビの飼育を調べて出てくるのは養殖業の話でしょうが、まず、養殖業の話と水槽飼育では根本が違います。彼らの手法は海水を汲み上げる方式か、海水を精製して無菌状態の海水にろ過した方法で、コレは飼育というより擬似的な海を陸に上げているだけでノウハウもへったくれもありません。このノウハウとは水槽飼育のノウハウですが、養殖業は安定的な出荷を目標ですが、水槽飼育は、長期飼育が目標なので全く違うと言うことを理解してください。 

 

 

まずは我が家のアワビ水槽内をチラッとお見せ。↓

 

ソイと仲が良い。

 

 

ガザミと マンリョウウミウシ。

 

 

夜になると活発に動き始める。

 

背面の穴から呼吸しているのがわかる。

 

エアレーションと濾過能力はサイズ以上のものを選ぶ。

 

 

 

 

  アワビ長期水槽飼育法

 

 

餌や繁殖法

コレが最も大事なのですが、アワビに限らず生体を飼ったら最低一週間は餌を入れるのはやめましょう。一ヶ月何も食わなくても問題ないほど彼らは強く、ゆいつ彼らが弱いのは水質悪化です。

優先順位は水質を維持することですので間違っても飼ってすぐに餌をあげることはしないでください。

以前、海外旅行にいって二ヶ月餌を忘れたことがありますが、アワビは水槽についた苔を食べて生きていてある程度であれば餌は最小限で良いです。

アワビは生涯にわたり3度大きく変化すると言われており、その変化ごとに消化器官が発達していきます。この過程を話すと長くなるので割愛しますが、大事なのはここからです。

主餌料は成長に伴い付着珪藻からアラメなど大型褐藻の幼体、そして大型褐藻の成体へと変化する ことが明らかにされています。

 

コレがなぜ大事なのかというと、アワビは大きさで食うもんが変わるってことです。

 

(餌は利尻昆布を水に戻したモノを針金で引っ掛け、水槽枠内側に吊るす。コレで食べ残しは限りなく抑えられる 既に半分食べられた状態)

 

大きいアワビは僕たちもよく利用する昆布を食べ、小さいうちは苔(付着珪藻)を食べるのです。コレは好き嫌いではなく、消化器官の発達が上記の3度変化する過程で進化するからなのです。その理由は既に学会で解明されていて、成長に伴い小型海藻群落を経てアラメ群落に移動する習性があり、この理由がまさに食性の変化によるものだと考えられています。

そして、アワビ雌成貝について、マコンブ、アラメ、アカモク、マクサ、アオサを個体別に充分量給餌して飼育し、産卵回数と産卵を数を比較した結果が報告されていますが、マコンブとアラメを摂餌した個体は、産卵数、産卵回数ともに多く、アカモクを摂餌した個体では、日間摂餌量および実験終了時 の肥満度がマコンブおよびアラメを摂餌した個体と同程度であったが、産卵数は著しく少なかったようで、マクサとアオサを摂餌した個体では産卵数、産卵回数ともに最も低かったことがわかっているので大きさに合わせた海藻をあげることが正解だということです。餌で生物の最大イベントである産卵に変化がある以上、ネットで書いてる餌は乾燥わかめで良いはあまりにも酷いです。

 

アワビを水槽で増やしたい方へ、

アワビの天然での産卵盛期は 8 月から 10 月にかけてでありますが、生殖巣の発達は 7.6 °Cを超える水温の積算値(成熟有効積算温度,EAT)に比例するため季節を問わず成熟の進行を人為的に制御することができます。養殖業の人たちはコレを巧みに使っているのです。

もっと言うと、EAT が 600°C・日以上になると、卵巣内に成熟した卵母細胞が優占して産卵が可能となり、1500°C・日以上で生殖巣が最大限に発達し、ほとんどの個体で産卵が可能となるのです。

また、飼育環境下では紫外線を照射した海水がアワビの産卵誘発に極めて有効であることが知られており、紫外線を照射してから配偶子を放出するまでの時間と照射量の関係が明らかにされ、効果的な放卵・放精の制御法が確立されていて、充分に成熟した個体では、紫外線の照射量が 800 mWh/L(海水を殺菌する際の約 10 倍 の照射量)のとき約 3 時間で放卵・放精することが明らかにされています。

 

受精から約半日でふ化し、浮遊幼生トロコフォア幼生ベリジャー幼生になります。この時期は海水中を泳ぎ回り、数日すると付着場所を探すようになります。確かですが、トロコフォアからベリジャーへなる過程は1.5日ほどだったと思います。このとき、珪藻が水槽内にある 又は、珪藻が着いた岩やプラ板を入れると幼生が付着し、変態します。これ以降から付着幼生となり、付着生活に切り替わり、私ちが知るアワビの形になります。

 

(水槽内のアワビが産卵、受精し産まれトロコフォア~ベリジャー幼生を経たアワビ幼生。毎年300匹ほどが生き延び成長する。水槽飼育下でも理論が解れば繁殖も可能)

 

 

水素イオン濃度(PH)

一番調子が良いのは8〜8,5ph で、基本海では、日中は海藻などの光合成によりphは高く推移し、夜間は低めに推移します。

また、生物の呼吸により酸素が消費されたり、生物の糞、死骸がバクテリアに分解される際も酸素が消費されることでphはどんどん低くなり酸性に傾く傾向があります。また、人間の生活圏に置く水槽飼育ではこれらに加え、暖房機器、人の数で二酸化炭素濃度がたかくなり、結果的にphが低くなっていくのです。また、このphは少々厄介で、炭酸塩硬度(後記述)と相反する関係があり、片方を上げると片方が下がる・・という難しさもあるのです。ですから基本、最初はphをコントロールは出来ないと思ってください。

ですので、この問題の解決策は、エアレーションです。 理由は上で話した通り、水槽では生体がいるいないに関わらず、酸素が常に消費されているのでエアレーションを必ずつけてください。

 

 

炭酸塩硬度(KH)

炭酸塩硬度とは、海水に含まれる重炭酸イオン量で、KHが高いとphの変動が低く、その逆も然りといったところ。難しく言ってもわからないと思うので端的に纏めると、このKHは海藻、もっと言えば光合成生物が消費するもので、光合成の際、利用するものなのです。コレがアワビの何に影響するんだよ。。。と思うかもしれませんが、先程上で話した通り、長期飼育をする事を考えると、餌は外部から与えることはしないほうが理想なわけです。もうわかりましたか? 

このKHをコントロールできれば、水槽に生えた苔、海藻だけで生体の維持は可能なのです。ちなみに僕は、もうかれこれ4年餌を与えていません。それでも大きいものは12センチを超え成長しています。

このことから、KHが高すぎると海藻、苔の大繁殖につながるので、水槽飼育の大前提である景観 という観点から言えばオススメだけどオススメ出来ないというのが本音。でもこんな方法もあるよっていう一つの知識として考えてくれればいいと思います。

ちなみに、このKHを補う(重炭酸イオン)にはバッファ剤、カルシウムリアクターで可能です。サンゴを飼育している方は馴染みのあるものでしょう。

 

 

水質維持

ここが正念場です。長文ですが、しっかり聞いてください。

アワビは魚は、カルシウムや各微量元素も吸収しています。理想は必要量与えることが理想ですが、ソレは正直不可能です。地球しかソレを出来ません。地球ってまじですごいんです。また、酸化還元電位ORPというものもあり、+だと酸化方向、−だと還元方向に偏移しているのですが、生物が活動している空間は+電位、砂の中や、海底のバクテリア活動空間は−電位になります。私達が想像する海水中は+電位で、平均346~350mV前後と言われていて、その電位値で水槽内の酸化の進行、異変がわかるのです。

端的にいえば、生体の追加が可能かどうかがわかります。魚が多い水槽は基本ORPが低く推移しますし、このORPがすごいのは+電位に傾いた場合、何かしらの酸化要因があり、生体が死んでるかどうかを見ることが出来ます。コレは目に見えないバクテリアが死んでもわかります。このORPを適正に維持するためにはエアレーションが最も効果的だと言われていますので如何にエアレーションが大切が解ってもらえたと思います。

で、水質維持に最も適した方法は 換水 コレに勝てるものは絶対ありません。

理由は近年の人工海水は超優秀でカルシウムや各微量元素が既に入っていますので換水をこまめにやるのは水質維持において一番勝つ結果が早い事実を頭にいて、貝類は、まめに換水を心がけてください。理由は貝類は魚と違い基本動きが一定で反応が見れないから調子が悪いかどうかが見極めが難しいからです。その見極めが難しいからこそ、いきなり死んだり・・を防ぐためにORPの話をしたのです。しかし、この人工海水にも苦手な微量元素があります。 それはヨウ素この微量元素は揮発性が高くすぐに無くなるのですが、生体が免疫維持に最も必要な微量元素なのです。ですから、ヨウ素に関しては別に購入し、定期的に添付してください。毎日添付しても問題ありません。

また、この突然死にはいろんな要因がありますが、これを防ぐためには人間側の理解度を深めることが最も被害を抑える方法であり、バクテリアたちの水質維持に寄与する過程を知っておかなければいけません。

まず、例として貴方の水槽に魚や甲殻類が居るとします。その生体は当然老廃物である糞や尿をだします。この老廃物は生き物にとって毒なのですがコレをバクテリアが分解することで限りなく効力の弱い毒へろ過します。この工程は

 

老廃物(有機物)→分解(酸化)→栄養塩  

 

となります。この栄養塩とは汚いもの。。と捉えてもいいと思います。まさに赤潮などはこの栄養塩になるからで、この栄養塩は甲殻類や、魚は体内に吸収できないのです。ですがこの栄養塩はバクテリアの餌なので無くてもだめです。上記の工程をもっと詳しく説明すると、

 

老廃物(有機物)→アンモニア→亜硝酸→硝酸

 

となります。

ここで大事なのはアンモニアが生体にとって最も有毒だということです。コレを最終的に硝酸まで分解するのがバクテリアの分解工程であります。では硝酸は無害なのか?と言われると硝酸まで分解されたらバクテリアも分解をほぼしないのでどんどん水槽内で蓄積されていきます。この硝酸はアンモニアに比べて弱毒ですが腐っても毒は毒。貯まれば当然生体の生死に関わります。

この硝酸を取り除く方法は上記で説明した換水 だけです。換水を怠るとどうなるかがわかったと思います。如何に普段の維持が大変か、地球がすごいかわかったと思います。ですから、ずぼらでめんどくさがりな性格の人には海水水槽には手を出さないほうがいいのです。

しかし、換水が良いからと言っても換水には掟があります。ソレは水槽内水温と換水水温の差異を極力無くす事。換水後死ぬ要因の一番は水温の急激な変化です。浮袋やその他昨日は急激な水温変化には対応していないので、コレを意識してください。また、バクテリアがまだ繁殖していない若い水槽は換水が多いとバクテリアの餌もないきれいな水は逆効果で、生体が住めない水なのです。水槽飼育はバクテリアの飼育と言っても過言ではないのです。水清ければ魚棲まずということわざがある通り、綺麗すぎてもだめなのです。換水は水槽立ち上げ当初は生体を入れす一ヶ月そのままフィルターを動かしてください。最低一ヶ月です。良く言えば二ヶ月は僕はほしいです。バクテリアは外部から入れなくとも空気中に居るので着層するまで待ちましょう。

既に水槽が立ち上がっているのであれば二週間に一回水槽の半分を換水することでアワビは問題なく長期飼育出来ています。

 

 

 

水槽サイズやアワビの好む環境、水温

コレに関してはどのくらいの量の生き物を飼うか、その種の特性によって大きく変わります。

ただし、どんな理由があれ、水槽が大きい方が生体に良いのはわかると思います。また、水槽サイズが大きいということは変化も緩やかに移行するので適応力と緩衝力があります。

アワビに関して言えば、大きい水槽のほうが圧倒的に有利で、何故か解りませんが・・・アワビは他の同種とくっつきたがり、同じところに集まる傾向があります。当然アワビは他のアワビの粘膜で同種を見分け見つけることができるのは知っていますが、どうも他に理由があるような気がします。水流を好むアワビ、好まないアワビが居るようで、一概に水流が強い方が良いは言えないと思います。しかし、水流は比較的あったほうがいいのは間違いなさそうで、水流を好むアワビは殻の成長スピードが早いのです。ですので、水流はあったほうがいいと言えます。どちらにしろ水流は溶存酸素量に貢献するのでそっちの観点からあったほうがいいと結論づけました。

 

レイアウトですが、コレは極力変なものは置かないほうがいいと思います。大きな石などは良いですが、夜は結構活発に動き回るので、アワビが吸着できる接地面を増やす考え方で考えたほうが良いでしょう。ですので、アワビを水槽で飼っても質素な水槽になるのは覚悟してください。

 

水温ですが、コレはエゾアワビとクロアワビしか飼育したことがないのでこの二種の話になりますが、クロアワビは23℃超えた時点で弱って行くのが確認でき、15~18℃くらいが一番活発に動いてる感じでした。ですので周年クーラー無しでの飼育はクロアワビでも不可能だということです。

エゾアワビに関しては非常に難しいのですが、個体差によって大きく適応水温が変わります。特に若い蝦夷アワビは22℃でも問題なく動ける傾向がありますが、大きいのは水温に敏感な印象を受けています。現在私の水槽では通年15℃をキープしてエゾアワビを飼育していますが、11~15℃が頗る調子が良いです。このアワビは大間産で魚屋で5匹7年前位に購入した天然物もので、採取地の影響が大きいのか、別水槽で20℃で飼育して半年後に全滅したことがありました。全滅前はどんどん肉が小さくなってい行き、餌の摂取量も減っていたので徐々に衰弱していったんだと思います。当時は違う水槽だけど海水は元いた水槽の海水を希釈しているのに何故だ?と悩んでいましたが、単純に水温でした。これに気付くまでに沢山アワビを殺してしまい申し訳ないと勉学に励んだものです。この後、アワビの研究において、生育に起因する外的要因は 水温と餌だけだという結果も出ていて、如何に水温がアワビにとって敏感に取り巻いてるか想像できるでしょう。

また、購入時はキンキンに冷やされた海水に入って売られているので購入時は特に低水温で水合わせしないといけません。

 

あとコレは個人的にびっくりだったのが、モエビを夏に網で採取しアワビ水槽に入れたのですが明らかにモエビの入った水槽のほうがアワビが元気だったのです。理由は全くわかりませんが、恐らく、アワビの殻の背面にある穴は吸い込んだ水や、老廃物を出したり精子、卵を出す機能がありますがその穴の掃除をモエビがしてる又は、何かしらその穴がアワビの調子を決定づける要因があるように感じています。コレは偶然かもですがアワビにはお掃除屋さんの甲殻類と相互関係があるのかもしれません。

 

(8年経過したアワビ成貝 140g 程に成長しているが、水槽飼育では大きくなる過程は6cmから極めて緩やかに進む。)

 

この相互関係は無碍には出来ないと思っていてどの生物も生物多様性の元、持ちず持たれずの関係を持った別種間の協力相乗効果関係が必ずあり、有名なラッコの話になる訳です。

専門的に言えば生態系にはキーストン種なる者がいます。簡単に言えば生態系の要石で石橋の要である1番真ん中の石に例えたのがキーストン種の由来。

 

ラッコの話を知らない人の為に言いますが、 ラッコを沢山乱獲した海はウニが大量発生しました。その後ウニは昆布等の海藻を食べ尽くし最後には自分たちの餌が無くなり自滅。海藻に卵を産み付けるイカやタコ、魚達も姿を消し死の海になりましたと言う話。

 

これ、 アメリカで起きた実話なのです。

 

結論絶滅まで追いやってようやくラッコがケルプ種(大型海藻類)のキーストン種だと分かったのです。この事から、アワビにもキーストン種が必ず住んでいる海域に共存していると僕は思っていて、これに関してはそのキーストン種であろう種を採取→混泳→経過観察 と長い期間と膨大な現場に通う労力が必要なのです。しかし、それが分かった場合、水槽飼育の生体維持率が一気に上がり、貴方は生物学の発展に大きく寄与する事になりますので是非、これを見ている変態様は種ごとのキーストン種を見つけてください。

 

ちなみに僕は釣りより、キーストン種と相乗効果関係種の調査で海に行く頻度が高いです。



↓過去記事


 

 

 

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

 

ちょっと疲れましたか?笑  

 最近、短くテキトーな知識をコピペで載せる同じサイトばかり。

 時代なのかな?と思っていますが、昔のネットは知識に溢れた猛者達が沢山いて宝の山だったのです。

 

彼らはどこに行ってしまったのか少し寂しい気持ち。

 

 

 

 長ったらしい事を書くブログはもう古いんでしょうか… ブログって自分の日常やいろんな方向がありますけど、僕は知識への探求の過程 としてブログはあるべきだと思っています・

 

この記事を見つけた子供や、大人が覚醒して学者へなるキッカケになって欲しいですね。

当然僕もその世界にいたわけですが、所詮辞めた人間なので核心を探求するにはその世界へ飛び込む一歩が必要です。

 

そのお手伝いをできれば。

 

 

まあ……

 

僕は、誰かの ありがとう があれば時代錯誤を乗り越え書き綴っていきます。

 

 

 

 

 

ではまた。