どんなに秘密があろうとも、愛と信頼は変わらない。
「スパイの妻」
『太平洋戦争開戦前の1940年。
何不自由なく暮らしていた福原聡子の夫・優作は、ある時仕事で満州へと渡った。帰国した優作は、日本軍の国家機密を持ち帰っていた。
聡子はその事を知らなかったが、優作の様子がおかしい事から、徐々に優作に対して疑問を持ち始めた。』
2020年劇場公開。
監督:黒沢清。
脚本:濱口竜介、野原位、黒沢清。
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大、板東龍汰、恒松祐里、みのすけ、玄理、笹野高史。
黒沢清が監督し、NHK制作のドラマとして放送されたものを映画として調整した作品。
第77回ヴェネツィア国際映画祭に出品され、北野武監督作品の「座頭市」以来11年ぶりにコンペティション部門で銀獅子賞を受賞。
その他、作品、監督、出演者が数多くの賞を受賞しています。
優作の様子に違和感を感じた聡子。自ら調べ、問い詰め、優作の本当の姿を知ることになります。
驚いたのが聡子の原動力。
優作への愛と信頼だけで動いています。
真実を知っても優作への愛は変わらず、優作の共犯者“スパイの妻”として行動を共にします。それが優作のためと思って、その一心です。
覚悟を決めた後の聡子は、まるで計画の首謀者のように優作を引っ張っているように感じました。
日本を敵に回そうとしているのにあの笑顔。優作を信頼しきってましたね。
その優作ですが、聡子の信頼が強すぎて怪しさが薄れたせいか、すっかり騙されました。
満州でやっていた事を聞いても、まだなんか隠しているのではないかと思ってはいたんですけどね。まさかそこまでする男だったとは。船、人員、フィルム、全てが計算。
彼は一体何者だったのだろうか。
どれが本当の優作だったのか。
そもそも“優作”という人間は本当に存在するのか。
聡子は優作を愛していたが、優作は真に聡子を愛してはいなかったのかもしれない。
最終的に割とモヤモヤする終わり方ではありますが、愛する者によって騙され、狂っていき、壊れていく女性の姿はすごくよく描かれていたと思います。
どんな状態でも、蒼井優は美しかったです。