評価が「ズコー」か「大発見」に二分されるNASAの発表。
問題は、
1. 宇宙人発見!への期待値が大きすぎたこと
2. リン酸・ヒ素置換生命の発見が何故そんなに重要か?
ということでしょう。
1.はNASAの広報の問題でしょうね。
この会見がいつもと比べて特別に設定されたのか、いつも通りだったのをマスコミが過剰に反応したのか?
予算確保のためとか、はやぶさに匹敵する評価を得るためとか言われてますが、
タイトルが「宇宙生物学上の発見について」では、すわ宇宙人発見か、となってもおかしくない。
そこは予期しとくべきだったのかも。
2. については、専門家であればあるほど驚いていること、つまり、
専門家として長いこと当たり前にように前提としてきた「原理」が覆された
ことが重要。
その前提とは、
生命を構成する基本的な素材、核酸(DNA, RNA)、タンパク質、細胞膜、などは、ほぼ炭素、水素、酸素、窒素、リンからなる
ということ。
この「原理」に慣れ親しんでいればいるほど、
「今まで自分たちが生命について考えてきたことがいかにちっぽけな範囲のことだったのか」
と実感し驚くのでしょう。
この前提は、高校の教科書にも載るくらいに当たり前のことなので、"当たり前"に乗っかって生物学を考えていた人たちには、考えなきゃいけないことが増えすぎてしまいます。
まぁ、そうして考えることが楽しいことなんですけど。
この前提「原理」に慣れていないと、重要さが解らない。「原理」と重大な事実の間のギャップが繋がらない。
ということで、どうやってこのギャップを埋めて興味を持ってもらって重要さを説明するか?
1. 主婦の皆様へ(そんなことより野菜の高騰が気になる)
あなたがヒ素入りカレーを旦那様に毎日食べさせているのに、いっこうに衰弱する気配がない。
不審に思って何かと理由をつけて病院で検査させたら、髪の毛どころか身体中から亜ヒ酸が検出された。
医者は生きているのが信じられない量だという。
自分の企みが露呈し、もはやこれまでと観念していたが、翌日になって旦那さまが置き手紙とともに家出。
実は彼は、ヒ素が当たり前にある星に生まれた皇子なのだという。身体中がヒ素でできていて、ヒ素を摂らないと生きていけない身体なので、隠れて亜ヒ酸入りスープを飲んでいたのだが、ばれてしまってはここにはいられない。
今までありがとう、愛していたよ、とのことだった。
残されたあなたは、夫をヒ素で毒殺しようとしたことへの罪悪感を背負いながら、次の恋を探すのである。
2. 小学生のみんなへ(つまんなーい)
悪のエイリアン、ヒソーが侵略してきた!
こいつの身体は我々にとって猛毒であるヒ素でできているのだ!
ヒソーのコアであるDNAは、我々の場合はリンという化学物質でできているところが、なんとヒ素でできているという、驚くべき生命体なのだ!
科学者たちの、ヒ素が猛毒であるのと同じように、リンはヒソーにとって猛毒であるに違いない、という提案により、ヒソーにリンシャワーを浴びせる作戦が実行された!
ヒソーはリンシャワーによってもがき苦しんでいる!効果はばつぐんだ!
…のように見えたが、ヒソーはリンの中でも生きていけるようだ。
地球は滅亡した。
3. 高校生向けの授業(ふーん)
今まで生命はCHONSPで出来ていると教えてきました。
でもそれはウソでした。ごめんなさい。
これからはCHONSPAsと覚えてください。
なぜAsでもこの細菌が生存していけるのかは先生も解りません。
ぜひこの謎を解明してノーベル賞を獲ってください。
そのあかつきにはノーベル賞講演で私の名前を出すように。
4.新橋サラリーマンへの取材(酔っぱらってても大丈夫)
ヒ素でできた遺伝子を持っている生き物が見つかったんですよ。
これって、もしかしたら岩石(ケイ素)やでできた生命だっているかも、って話なんですよ。
そうすれば、広い宇宙で地球とは違う環境の星でも、宇宙人がいる可能性が出てきたってことなんですよ。
すごくないですか?どう思われますか?
4. 大学生に対する講義(夢をとるか現実をとるか)
生体のリンがヒ素で置換可能だと言うことは、これまで学んできた生物学の教科書に重要な変更を要求する可能性がある。この細菌は、
エネルギー源であるリン化合物・ATPの代謝経路が、ヒ素化合物(ATAs)であっても問題ないこと、
DNAのリン酸基がヒ酸基に置換された遺伝物質を持ち、これを安定に保持できる何らかの分子機構を備えていること、
ヒ素はリンに置換することで通常様々な生体反応を阻害するはずだが、これを防ぐ驚くべき分子メカニズムを備えていること、
などの特徴を持っているはずである。
ここまでテスト範囲。
7. 生物学、宇宙学研究者の提言(真面目に)
この細菌についての今後の研究で必要なことは、この細菌が我々リンを主成分とする生命より先に生まれたか、それともAsの豊富な環境に適応した結果生まれたか、を明らかにする証拠だ。その結果によっては原始生命がAs型であったという可能性を提示し、生命の誕生の議論に大きな影響を与える。また、この細菌が隕石孔の近くに生存しているということからの大きな推論ではあるが、宇宙生命起源説に対する有力な証拠となりうる可能性がある。これまで地球外生命の探索をCHONSP型のものを優先して行ってきたが、今後はAsも含めて広範囲に探索することも必要になってくるだろう。
Pの代わりにAsが生体の部品として置換できるという事実は、他のCHONSについても同様である可能性がある。特にSFでしかなかったSi生物がいる可能性でさえ否定できない。我々が前提としてきた、CHONSP型の生命、分子メカニズム以外のものが存在する可能性がある。これは、生命の既存の概念を大きく塗り替えるものである。
分子生物学として重要な点は、この細菌のAsが関わる生体反応を解明し我々のPが関わる反応と比較することで、我々の反応酵素・代謝経路がPに選択的であるメカニズム、またこの細菌においてAsが許容されているメカニズムについて明らかにすることができるだろう。
8. 友達(まあ、話にはつきあってやるけど)
ARMSって実在するかも。
こんな感じ?やっぱりサイエンスコミュニケーションは生やさしいものではないなあ。
問題は、
1. 宇宙人発見!への期待値が大きすぎたこと
2. リン酸・ヒ素置換生命の発見が何故そんなに重要か?
ということでしょう。
1.はNASAの広報の問題でしょうね。
この会見がいつもと比べて特別に設定されたのか、いつも通りだったのをマスコミが過剰に反応したのか?
予算確保のためとか、はやぶさに匹敵する評価を得るためとか言われてますが、
タイトルが「宇宙生物学上の発見について」では、すわ宇宙人発見か、となってもおかしくない。
そこは予期しとくべきだったのかも。
2. については、専門家であればあるほど驚いていること、つまり、
専門家として長いこと当たり前にように前提としてきた「原理」が覆された
ことが重要。
その前提とは、
生命を構成する基本的な素材、核酸(DNA, RNA)、タンパク質、細胞膜、などは、ほぼ炭素、水素、酸素、窒素、リンからなる
ということ。
この「原理」に慣れ親しんでいればいるほど、
「今まで自分たちが生命について考えてきたことがいかにちっぽけな範囲のことだったのか」
と実感し驚くのでしょう。
この前提は、高校の教科書にも載るくらいに当たり前のことなので、"当たり前"に乗っかって生物学を考えていた人たちには、考えなきゃいけないことが増えすぎてしまいます。
まぁ、そうして考えることが楽しいことなんですけど。
この前提「原理」に慣れていないと、重要さが解らない。「原理」と重大な事実の間のギャップが繋がらない。
ということで、どうやってこのギャップを埋めて興味を持ってもらって重要さを説明するか?
1. 主婦の皆様へ(そんなことより野菜の高騰が気になる)
あなたがヒ素入りカレーを旦那様に毎日食べさせているのに、いっこうに衰弱する気配がない。
不審に思って何かと理由をつけて病院で検査させたら、髪の毛どころか身体中から亜ヒ酸が検出された。
医者は生きているのが信じられない量だという。
自分の企みが露呈し、もはやこれまでと観念していたが、翌日になって旦那さまが置き手紙とともに家出。
実は彼は、ヒ素が当たり前にある星に生まれた皇子なのだという。身体中がヒ素でできていて、ヒ素を摂らないと生きていけない身体なので、隠れて亜ヒ酸入りスープを飲んでいたのだが、ばれてしまってはここにはいられない。
今までありがとう、愛していたよ、とのことだった。
残されたあなたは、夫をヒ素で毒殺しようとしたことへの罪悪感を背負いながら、次の恋を探すのである。
2. 小学生のみんなへ(つまんなーい)
悪のエイリアン、ヒソーが侵略してきた!
こいつの身体は我々にとって猛毒であるヒ素でできているのだ!
ヒソーのコアであるDNAは、我々の場合はリンという化学物質でできているところが、なんとヒ素でできているという、驚くべき生命体なのだ!
科学者たちの、ヒ素が猛毒であるのと同じように、リンはヒソーにとって猛毒であるに違いない、という提案により、ヒソーにリンシャワーを浴びせる作戦が実行された!
ヒソーはリンシャワーによってもがき苦しんでいる!効果はばつぐんだ!
…のように見えたが、ヒソーはリンの中でも生きていけるようだ。
地球は滅亡した。
3. 高校生向けの授業(ふーん)
今まで生命はCHONSPで出来ていると教えてきました。
でもそれはウソでした。ごめんなさい。
これからはCHONSPAsと覚えてください。
なぜAsでもこの細菌が生存していけるのかは先生も解りません。
ぜひこの謎を解明してノーベル賞を獲ってください。
そのあかつきにはノーベル賞講演で私の名前を出すように。
4.新橋サラリーマンへの取材(酔っぱらってても大丈夫)
ヒ素でできた遺伝子を持っている生き物が見つかったんですよ。
これって、もしかしたら岩石(ケイ素)やでできた生命だっているかも、って話なんですよ。
そうすれば、広い宇宙で地球とは違う環境の星でも、宇宙人がいる可能性が出てきたってことなんですよ。
すごくないですか?どう思われますか?
4. 大学生に対する講義(夢をとるか現実をとるか)
生体のリンがヒ素で置換可能だと言うことは、これまで学んできた生物学の教科書に重要な変更を要求する可能性がある。この細菌は、
エネルギー源であるリン化合物・ATPの代謝経路が、ヒ素化合物(ATAs)であっても問題ないこと、
DNAのリン酸基がヒ酸基に置換された遺伝物質を持ち、これを安定に保持できる何らかの分子機構を備えていること、
ヒ素はリンに置換することで通常様々な生体反応を阻害するはずだが、これを防ぐ驚くべき分子メカニズムを備えていること、
などの特徴を持っているはずである。
ここまでテスト範囲。
7. 生物学、宇宙学研究者の提言(真面目に)
この細菌についての今後の研究で必要なことは、この細菌が我々リンを主成分とする生命より先に生まれたか、それともAsの豊富な環境に適応した結果生まれたか、を明らかにする証拠だ。その結果によっては原始生命がAs型であったという可能性を提示し、生命の誕生の議論に大きな影響を与える。また、この細菌が隕石孔の近くに生存しているということからの大きな推論ではあるが、宇宙生命起源説に対する有力な証拠となりうる可能性がある。これまで地球外生命の探索をCHONSP型のものを優先して行ってきたが、今後はAsも含めて広範囲に探索することも必要になってくるだろう。
Pの代わりにAsが生体の部品として置換できるという事実は、他のCHONSについても同様である可能性がある。特にSFでしかなかったSi生物がいる可能性でさえ否定できない。我々が前提としてきた、CHONSP型の生命、分子メカニズム以外のものが存在する可能性がある。これは、生命の既存の概念を大きく塗り替えるものである。
分子生物学として重要な点は、この細菌のAsが関わる生体反応を解明し我々のPが関わる反応と比較することで、我々の反応酵素・代謝経路がPに選択的であるメカニズム、またこの細菌においてAsが許容されているメカニズムについて明らかにすることができるだろう。
8. 友達(まあ、話にはつきあってやるけど)
ARMSって実在するかも。
こんな感じ?やっぱりサイエンスコミュニケーションは生やさしいものではないなあ。







