コロナで、学校が休みになったことで、教育格差の問題が取り上げられています。

「勉強が遅れる、家にオンラインの環境がない、オンライン教育できる教員がいない」

今さかんに言われていますが、教育格差なんて、今に始まったことではないのです。

 

よく考えてみると「お受験」だとか、私立中学受験とか、マスコミなどで報道されます。

学習塾をやってきた者からすれば、コロナで2,3か月の休校など、たいした遅れではありません。

夏休み(40日間)や土曜日などを、柔軟に授業日にあてれば、

遅れを取り戻すことは、そう難しくありません。

 

それよりも問題なのは、私立学校です。

特に私立中学への受験は、非常に熾烈な競争です。

○○大学付属中学校なんて、私立中学に合格すれば、内部進学の制度があり、

一定基準の成績を収めれば、そのまま、大学まで進学できます。

一般大学入試受験者よりもかなり優遇されていると思います。

 

教育の平等から言えば、誰もが希望する教育を受けることができるのが原則ですが、

私立中学受験には通常の学校の授業内容では、到底解くことができない難問が出題されます。

受験準備が必要になってきます。

そのため、早い児童では小学1年から、遅くとも3,4年生からは、厳しい受験勉強(訓練)が必要になります。

その受験勉強は学校では対応しませんから、当然予備校・塾・家庭教師ということになります。

つまり、多額の受験費用が必要になります。普通の家庭では、費用が出ないです。

 

私自身、中学受験の生徒を、通算10年間ほど教えましたので、このあたりの事情はよくわかります。

まずは、有名な合格実績のある予備校や塾で、遅くとも小学4年当初より通塾、特訓開始。

当然授業は、高度な問題が多いので、予備校や塾の授業だけではついていけない児童が続出。

 

その児童は、塾などが終わって家に帰ってから、

家庭教師をつけて、できなかったところをできるまで復習。

もちろん、塾が終わってから家庭教師ですから、深夜12時くらいまでかかることもあります。

実際、私に依頼してきたある児童は、塾が終わってから、夜10時から11時30分まで、週3回特訓しました。

勉強ではありますが、もはや、ここまでくると教育という名の訓練という次元です。

この児童はあまりに疲れていて、居眠りをすることも多かったですが。

(この児童は成績が良く、私が教えるまでもなく合格できる実力があり、何の問題もなかったのですが)

 

こういう生活が受験日まで続きます。毎日勉強漬けです。

それでも、私立中学を目指す理由があるのです。

この児童の父親からその生々しい理由を聞かされます。その要約は以下の通りです。

「先生、どうして、ここまでするのかと思っているのではないですか。私立中学受験で予備校・家庭教師など、総額1000万くらいはかかりますよ。しかしね、いま頑張っておいて、私立中学に入れば、大学受験で、すごく有利なんですよ。私立中学は先取り学習で、どんどん先に進んでいく。勉強するレベルは非常に高い、中学3年では、高校の内容に入っていく。高校では、すでに先取り学習しているから、大学受験対策に特化した学習ができる。今までのデータも蓄積されている、公立とは比べ物にならない。私立で勉強して東大や国立大学医学部をめざす国立は医学部も授業料が安い。私立医学部と天と地の差、今の1000万はとても安い、先行投資なんですよ」

 

公立中学で学び、高校に入ってからはじめて高校の内容を学び

大学受験に臨むのとは大きなハンディができてしまいます。

中学からハイレベルの内容をこなして、高校の先取りをし、高校では大学受験対策に特化する。

これをやっているのですから東大とか、国立医学部とか、合格できて当然というわけです。

やれやれ、大学受験の不平等、これは大問題だと思います。

 

この不平等について今まで論じている人はいませんね。これこそが、本当の教育格差なのですが。

(ちなみに、私は、公立中学・公立高校出身です)

塾をやっていたからこそ、肌で感じた、こういう本音の話がきけたわけです。

 

「君には無限の可能性がある」

こういう綺麗ごとを言う人は星の数ほどいます。しかし、この不平等に言及はしません。

せめて、子供たちの世界くらいは平等に競争させてやりたい、そういう世の中をつくるのが

私たち大人の使命だと思います。

 

とは言え、私立学校は公然と認められているわけですから

この仕組みを利用することを止めることはできません。

 

残念ながら、金持ちが有利なのは事実です。

しかしながら、それをただ受け入れるのは、絶対嫌だと私は思います!

ひと泡吹かせてやりたいじゃないですか。下剋上してやりたいですね!

だからこそ、今の世の中の仕組みを知ったうえで、どうすれば、この大きなハンディを

克服できるのかを考えるのも良いと思っています。

 

不平等・不条理に打ち勝つくらいの気概でいかないことには、道は拓かれないのが

今の世の中かも知れないですね。

決して諦めないで、ひたむきな心で取り組むのも、また、やりがいがあると思っています。