懐かしい記憶の中の小さな町—集集 | 台湾観光のブログ

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線路に車輪の音が響き、躍動感にあふれた色彩を施された列車が向かってくる。ここはレトロなローカル線で知られる台湾鉄道集集支線。内外から訪れる旅人は、鉄路をたどり、日本時代から残る集集駅に足を運ぶ。またそこから自転車に乗り換えて緑あふれる自然のなかを快走する。歴史と文化の香りを放つ名所を巡り、レトロな味わいの美食を味わう旅だ。

集集は南投県で面積最小の鎮(町)。今年、観光局が募集した「台湾十大観光町村」の一つに選ばれた。魅力がぎっしり詰まった集集では、懐かしい物語が旅人たちを待っている。




集集の歴史
人と物が集まる集散地

時間が一世紀前に戻ったかのような素朴な町、集集。不思議な地名である。もとは「収集」と表記していたという説もある。生活用品が不足していた開発初期、ここに軌道が開通したことで、各地に点在していた人々は、決まった時間にここに集まり、物物交換の方式で、生活に必要なものを手に入れるようになった。それが地名の由来だという。

かつて外部との交通は、トロッコや荷役夫による運搬に頼っていた。しかし、大正末期、日月潭発電所の建設が始まり、工事に使う資材を運搬するため、二水から車埕へ向かう幹線鉄道が開通し、集集支線には二水・源泉・濁水・龍泉・集集・水里・車埕の各駅が設けられた。こうして1922年の集集支線開通により、外部との往来が盛んになり、町は大きく発展することになった。しかし1999年の大地震で集集は大きな被害を受けた。けれどもこの十年余りの復興努力を経て、この古風で質朴な町は多彩な表情をのぞかせるようになっている。



観光スポットをのんびりと
古い時代の面影を残す和風駅舎–集集駅




集集駅はヒノキ造り。台湾鉄道は1986年、赤字が深刻だった集集支線の廃線を決めた。しかし、各界からの反対の声があがり、集集駅は解体の危機を免れた。今では集集駅は元気を取り戻し、国防部から譲り受けた退役戦車が駅前に鎮座している。駅は現在、集集鎮公所に管理されている。

木枠の窓を通して明るい光が差し込む。この典雅で古風な駅は一世紀近い歴史を経て、内外から多くの旅人が訪れる地となっている。ただその姿を目に納めるためだけに。


樟脳業の歴史をとどめる木造建築





集集駅付近には、独特の風格を持つ木造の和風建築がある。これが一世紀余りの歴史を誇る「集集樟脳出張所」だ。両開きの扉は、空間のつながりを重んじる日本式で、簡潔な構造の明るい建築。集集の初期の繁栄は樟脳と切っても切れない縁がある。台湾領有からまもない1898年、日本は樟脳の採取と製造、販売業務を執り行う「集集樟脳出張所」を設置した。戦後、樟脳産業は徐々に衰退し、出張所はその機能を失ったが、台湾に現存する唯一の樟脳出張所として、集集鎮公所は「集集文化産業園区」を設置する計画を進めている。



住所:集集鎮民生路65号(集集鎮公所そば) 
見学予約電話:049-2761477


風を切って走る緑のパラダイス—緑のトンネル




台湾全島にその名を馳せる集集緑のトンネルは、名間郷と集集鎮の中間にある。両側にクスノキが聳え、密生した枝葉が全長4.5キロにわたりアーチ型のトンネルを形作っている。1940年に植えられたクスノキは千本余り。平行して延びる線路には列車が走る。ここではペダルを精いっぱいに踏んで、放出されるフィトンチッドを胸いっぱい吸い込もう。心も身体も芯からリラックスできるだろう。


集集自転車道環状線 

集集自転車道環状線は集集攔河堰堤岸景観線、集集緑のトンネル景観線、集集環鎮景観線の三つのコースに分かれる。全長は約20.8キロで、集集緑のトンネル、集集駅、明新書院などのスポットをつないでいる。自転車で風を切って走り、のどかな田園風景を味わおう。


学び舎の精神を受け継ぐ—明新書院





集集の三級旧跡「明新書院」は1882年の清代光緒年間に建てられた三合院式建築で、正殿は講義と祭祀の機能を兼ねている。古斎館はかつての図書館。書院内では彫刻が施された梁、古い掛け時計、牛車が見られ、米甕・酒甕・油甕など多様な甕も展示されている。

明新書院は学問の神様「文昌帝君」を祭るため、毎年六月の大学入試前夜には「開竅(悟りを開く)」イベントが開催され、受験生が順調に知識の殿堂へ向かえるよう祈る。明新書院を見学すれば、当時の教師と学生の暮らしぶりを知ることができる。

住所:南投県集集鎮東昌巷4号


陶文化の歴史

伝統産業が新生活美学


山林資源に富む集集は濁水渓流域にあって、集集支線付設以降は木材の一大集散地となった。また、集集は耐火鉱土、窯焼きの燃料を擁し、水の便も良いため、窯業が主要産業の一つとなり、それが後に、水里・信義など周辺へも広がっていった。


大自然に親しむ「陶」の里 -- 活石窯陶芸園区 




「生活芸術」をモットーとする集集の「活石窯陶芸園区」は静かな生活の中に一つ一つ夢を築いてきた。歐陽一中、戚婉瑩夫妻は、定年退職後に「添興窯陶芸園区」のオーナーに師事し数年陶芸を学んだ後、「活石窯陶芸園区」を設立した。お祖母ちゃんから孫まで、一家五人揃って創作に勤しむ彼らは、巧みな技によって人生のさまざまなシーンを描き出す。それぞれの作品に、それぞれの物語がある。

活石窯陶芸園区は1998年の設立。自然生態と水、土壌の保護を原則とし、鳥がさえずり花が咲き乱れる景観は、桃源郷のよう。オーナーが引き取った十数匹の野良犬、野良猫は自由で温かな環境で暮らしており、人と大自然との間に距離が感じられない。園では陶芸品をオーダーできるほか、ろくろ体験ができる。また、陶芸課程では、BBQ場と中国茶コーナーが提供される。

住所:南投県集集鎮田寮里草嶺巷3-21号 電話:049-2781445


四代続く窯元—添興陶芸村




「陶芸とは一種の態度であり、きらびやかな表像ではない!」緑のトンネル脇にある「添興陶芸村」には、台湾で最も古い現役の窯「活蛇窯」がある。30年余りを陶芸に捧げてきた添興窯の三代目主人、林清河氏は、「作陶は、かつては生活用品のためだったが、今では一種の生活美学となった」という。

 1955年に創立された添興窯の老蛇窯は、最も自然な焼締め窯。産業が高度化するに従い、蛇窯(細長いためこの名がある)も一つ一つ姿を消して行ったが、蛇窯を守ることで台湾陶芸の伝統をつなげようと、添興窯は蛇窯で製陶を続けている。

 添興窯陶芸村のショップには、さまざまな茶具・壷・花器・カップ・タイルといった素朴で雅趣あふれる陶芸品が並ぶ。また、飲食のサービスもあり、陶器作りにチャレンジすることもできる。園内の蛇窯、事務所跡、人力旋盤は、歴史建築として高い保存価值があり、2009年には南投県文化資産に指定され、ガイドサービスもある。

 林清河氏は弟子をとり、陶芸精神の伝承に努めている。南投における製陶業の発展を語る上で、添興窯は欠かせない存在だ。

住所:南投県集集鎮田寮里楓林巷10号  電話: 049-2231191


レトロなB級グルメ

懐かしい味が街中に溢れる


水と気候に恵まれた集集は、小型で香りが強く、弾力がある山蕉(バナナ)を産する。集集のバナナは有名で、そのため集集にはバナナを使った名産品がいっぱい。



一億バナナアイスクリーム





駅正面に店を構える「一億バナナアイスクリーム」は弾力に富み香り豊かな地元の山蕉を使う。新鮮素材にこだわれば材料コストは高くなってしまうが、こだわりのバナナアイスクリームは色素、香料を一切添加せず、甘さ控えめのヘルシーさを追求している。オーナーによれば「バターを使わず、バナナの果肉の割合が高いため爽やかな口当たりが特徴。サイクリング中に食物繊維を補充しようと立ち寄る人も多く、リピーター率が高い」という。

住所:南投県集集鎮民權路468号  電話:049-22761018


集集バナナエッグロール専門店



集集駅横に漂うバナナとタマゴの香りは、若い呉夫妻が経営するエッグロール専門店から。一家挙げてのエッグロール好きが高じて集集の特産を集めたバナナエッグロールを開発した彼らは「材料の配合から一切気がぬけない。バナナは香りを発するまで熟成させる」という。ヘルシーでおししいバナナエッグロールはしっかりした口当たりでサクッと軽く、香りがうれしい。



伝香情(琳家元冰品店前)



「失恋だっていい味!」が売り文句の看板商品「憂鬱黄金船」は、揚げたバナナの皮。オーナーの薛国棟氏はユーモアたっぷりに「これまで『失恋したらバナナの皮を食べる』と言われて来たのは、失恋の苦い味を表していたもの」という。薛オーナーは、青いバナナの皮にオリジナルソースをつけ油で揚げたところ、意外にも絶妙な風味になることを発見した。抗鬱効果もあり、人気商品となっている。剥きたてを揚げる新鮮さを堅持しているため、冬/夏休み、週末、国定休日にだけ営業している。



懐かしい昔の味 -- 峰古早味50年代伝統美食 






レトロな美食を看板とする小さな店で、シイタケともち米腸詰、紅麹涼圓(お団子)、伝統の米糕、肉丸子を食する。これら懐かしい味は、多くの台湾人にとって幼い頃の記憶を呼び覚ますもの。感動で涙を流す客もいるという。オーナーの趙志峰氏は岳母の技を継ぎ、それに自己流の改良を加え、涼圓に至っては四回も改良している。オーナーは「昔の食物に対する記憶を蘇らせながら、油と塩分、糖分を控えめにすることで、さまざまな年齢層に満足してもらえる」という。

住所:南投県集集鎮民生路175号 電話:049-2761669



音楽・コーヒー・名月--農村老爺集集民宿 



 




「農村老爺集集民宿」はその名の通り民宿。自然がいっぱいの三合院を通り抜ければ、赤レンガの壁が目に入る。昔なつかしい洗濯物干し場、井戸、かわいい瓜類や豆類の棚。屋内調度にはヒノキ、ヤナギが使われ、木の香りが心地よい。視線を移せば、取り外し式の木板扉、算盤、陳列棚が眼前に現れる。子供の頃通った雑貨店が民宿に隠れていたなんて。台所には、農家にはなくてはならない大灶(作り付けの中華なべ用かまど)、菜櫥(野菜保存棚)があり、廊下に出れば、温かみのある紅眠床(セコイア製のベッド)、和風の畳の部屋が見える。階段の踊り場には、水墨画がびっしり掛かり、書籍が並ぶ秘密基地がある。明るく落ち着く空間で、穏やかな読書の一時はいかがだろう。

 「何物にもとらわれず、純粋に本を読み、コーヒーと音楽を楽しむ。そんな生活を夢見る……」と農村老爺民宿の劉オーナーはいう。そして彼は夢を実現したのだ。





建設業に従事していた劉氏は1999年大地震の後、文化事業に転職した。集集の元の姿を復元させるため古老を尋ね歩くうち、徐々に集集の美しい過去を知り、古きを愛する気持ちが強まり、劉氏は古い物を集めるようになった。レストランの一角では、復刻した蓄音機がクラシックの調べを奏でる。窓辺に腰掛け、オーナーが淹れるコーヒーを手に月を愛でる。故郷に帰ったような、温かで穏やかな時を過ごそう。

集集農村老爺集集民宿  TEL:049-2763592 南投県集集鎮鹿谷瑞田村9-11号