お彼岸は春と秋にあります。

春分の日は太陽が真東からのぼり真西に沈む日で、昼夜の時間が同じになります。春分の日を中心として前後3日を加えた7日間を春の彼岸といいます。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言い、彼岸を終えると寒さも緩むことでしょう。

 

お彼岸は仏教週間として、6つの修行(六波羅蜜寺:ろくはらみつ)をしましょうと説かれています。6つの修行とは次のようなものです。


① 布施・・・見返りを求めず親切をすること

② 持戒・・・自分に課したルールを守って生きていくこと

③ 忍辱・・・耐え忍びガマンすること

④ 禅定・・・心静かに過ごすこと

⑤ 精進・・・1つのことをあきらめずに続けること

⑥ 智慧・・・仏さまが説いた教え

 

このうち、最後の⑥智慧について書いていきます。


 

実際に使える知識のことを知恵と言います。

では、智慧という字を書くときはどのようなときでしょうか。

 

智慧は仏さまの教えを実践することを意味します。

 

若狭の多田寺(ただじ)にて拝聴した話です。

先代の御住職はどうしても御本尊のお姿を見たいと思いました。しかし、多田寺では60年に1度しか開帳しないという決まりがありました。


60年後に自分が生きている保障はない。どうしたものか、と悩んだ末に21日間、住職は御本尊の前で祈りました。
「60年に一度の開帳を破り、どうしても御本尊のお姿を拝見したい。私はお大師さまのお言葉に従うので許して欲しい」

さて、先代住職が聞いたお大師さまのお言葉とは?

お大師さまは高野山奥之院で永遠の定に入り、即身成仏されています。
その時に、お大師さまは何かを書き残しました。そして、弟子たちに告げたのです。
「100年後には、高野山は荒廃の時を迎えるであろう。その時にこの箱を開けよ」
そう言い残したのです。箱は開けられることなく、大切に守られました。

やがて100年の後、お大師さまが予言したとおり高野山は荒廃の時を迎えます。末徒たちは様々な知恵を凝らしてみても、どうにもなりません。



今こそはお大師さまの書き残した箱を開ける時だと相談し、開箱をしました。





そこに書かれていたのは、たった一言でした。

「時の風になびけ」

時代とともに人は変わっていく。高野山も時代とともに変わらなくてはいけないというお大師さまのお諭しでした。

多田寺の先代の住職は、お大師さまの言葉通りに御本尊を開帳し重要文化財の指定を受けたのです。



頑なに古いものを守り続けていくことは大事なことです。しかし、お大師さまの言葉にある「時の風になびけ」も仏さまの説いた智慧です。


仏教はお釈迦さまが説いた教えがシルクロードを伝って中国へ、さらに朝鮮半島から日本へと伝わっていく中で変貌と変遷を繰り返しました。仏教は84,000もの経典が生まれるほどに多彩な解釈があります。

 

仏教はこれだけ多彩になったからこそ、仏教が伝わった土地で「時の風になびく」ことができ根付いていったのです。

仏教の智慧とは、時の風になびき変化し続けることなのだと思います。

 

よいお彼岸でありますように。

 

合掌

 

仏教の知恵で心豊かに過ごせますように祈念しております。


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