法務局の屋根裏には、
ねずみの兄弟が住んでいます。
「ねえ、兄ちゃん」
「なんだよ」
「広島法務局福山支局に
屋根裏のねずみの兄弟あてで
郵便が届いたんだって」
「それ、ウソだろ」
「ま、ウソだけどね。
なんでわかったの」
「人間がそんなバカなこと
するわけじゃないか」
「まあね。
あ、兄ちゃん、相続登記って、
司法書士でないとダメなの?」
「そんなわけないじゃないか。
登記は本人申請が原則だ」
「あ、そうなの?」
「不動産登記法を見てみろ。
隅から隅まで」
「どういうこと」
「どこにも司法書士がするなんて
書いてないから」
「そうなの?」
「司法書士という言葉すらない」
「じゃ、なんで司法書士以外が
しちゃいけない、っていうの?」
「それは、司法書士法第73条に、
司法書士会に入会している司法書士
又は司法書士法人でない者
(協会を除く。)は、第3条第1項第1号
から第5号までに規定する業務を
行ってはならない、とあるから」
「第3条第1項って?」
「司法書士の業務に関する条文で、
第1号が登記供託手続きの代理、
第2号が法務局提出書類の作成、
第3号が審査請求の代理、
第4号が裁判所検察庁提出書類作成、
第5号が前各号についての相談」
「つまり、代理をすることはもちろん、
登記の書類作成も、
その相談すらもできないってことね」
「そういうこと。
ただ、家族が足が悪くて行けないとか
忙しくて申請に行けないとかいう時に
家族に委任するような場合まで
制限するものではない」
「業務としてすることが問題なのね」
「そうね。
本人申請であれば全く問題ない」
「そうだよね~。
法務局の登記手続案内には
毎日いろんな方が来られてるもんね」
「あんまり多いから予約制になってる
くらいだもんな」
「じゃ、なんで登記は司法書士に、
っていうの?」
「そうだな~。
登記申請は自分でできるけど、
中には難しいケースも多い」
「自分でするのは難しい場合もある、
ってことね」
「そう、
あと、何回か法務局に足を運ぶ
必要があるので」
「1回法務局に行くだけでは
済まない、ってことね」
「そう。
ちょっと夏休みだから行ってくる、
では登記は済まない」
「なるほどね。
何度か法務局に通える余裕が
あって、書類が難しくなければ
自分で申請してもOKということね」
「そういうこと。
退職して時間に余裕のある方とか
法務局に通うのが苦痛でない方は
チャレンジする価値はあると思うよ」
「そうだね。
とりあえず、登記手続案内で
必要書類とか書き方は教えてもらえる
ので、無理だと思ったら司法書士に
依頼すればいいね」