法務局の書庫には、
今も、ねずみの兄弟が住んでいる、らしい。
「兄ちゃん、兄ちゃん」
「なんだよ」
「兄ちゃん、大変なんだって」
「だから、なんだよ」
「不動産登記情報を
オープンデータにするんだって」
「不動産投機情報?
ああ、東京五輪が近いからなあ。
地価が上がってるところは
上がってるみたいだな」
「いや、その投機じゃなくて」
「なんだよ」
「登記簿のデータをオープンに
するんだよ」
「ほほ~。そりゃいい話じゃないか。
だいたい1筆450円とか、
高すぎだって。
下手したら、固定資産税評価額より
登記情報のほうが高かったりする」
「確かに、それはおかしいと思う」
「だろ?土地の値段が安いのに
なんで所有者確認するだけで
450円も払わないといけないんだ」
「登記情報提供サービスだと、
所有者事項だけの確認なら
145円だよ」
http://www1.touki.or.jp/service/index.html#service_05
「それは良心的だな。
そのくらいじゃないと」
「それはいいとして、所有者事項については
無償で公開するっていう動きが
あるらしいよ」
「所有者事項か~。
でも、オープンデータにするっていう
だけだろ?」
「そうそう。だから、リアルタイムの提供とか
一般の個人に1筆ずつの照会に対応する、
というようなものではないような気がする」
「ふ~ん。でも、リアルタイムではないに
しても、無料なら気軽に活用できる、
ってわけだな」
「そうだね。証明が必要なら法務局で、
とりあえず所有者の確認だけなら
オープンデータをダウンロードして、
という形になるのかな」
「しかし、所有者の住所氏名の公開、
ってやっぱりなんだか抵抗があるな」
「今でさえ。個人情報じゃないのか、
と言われてるのに、それが無料で
大量に公開されてしまうと、
いっぱい土地を持ってる人とかから
苦情がきそうな...」
「業者からダイレクトメールが届く、
とかな」
「賃貸住宅を建てませんか、とかね」
「それもあるけど、名寄せの危険性を
感じるな」
「名寄せ?」
「今は、法務局は、登記名義人からの
検索には対応していないけど」
「うん」
「民間に所有者の住所氏名データが
大量に公開されたら、すぐに全国版の
名寄帳が作られそうな気がしないか」
「名前から、全国のどこに土地を持ってるか
検索できるってことか~」
「もちろん、同姓同名って、ものすごい数が
いると思うけどね」
「いや、大きいデータを処理できる
コンピュータなら一発で検索できるね。
所有者情報だけなら、軽いし」
「うん、ま、さっき言ったように、
同姓同名が数多いから、
どれが本当にその人の資産か..。
どのくらい使えるかわからないけどな。」
「オープンデータ化は、世の中の流れ
だから、実現するんだろうね~」
「そうなると、また別の手を使って、
隠し資産をつくるんだろうな、
お金持ちは」
「そうだね」
「ところで、何が大変なんだ。
俺たちねずみにはなんの関係も
ないじゃないか」
「そうだね」