「で?」
「なによ」
「登記簿なんか見て、何が面白いのよ」
「そうねえ、たとえば...」
「たとえば?」
「土地の所有者が誰かがわかるの」
「土地の所有者?」
「そう。持ち主のことね」
「そんなの見て、何が面白いのよ」
「そうね...。
たとえば、あなたの家は、
今、誰の名義で登記されてるか、
わかる?」
「わかるわよ、当たり前じゃない」
「ほんとに?」
「ほんとよ」
「見たことある?」
「見たことはないけど...」
「でしょ?見たことはないでしょ?」
「まあ、登記なんて調べることないわね」
「夫の名義だと思っていたら
実は、夫の父との共有だったとか」
「それはないと思うけど...」
「夫の母との共有だったとか」
「それもないと思うけど」
「夫の愛人との共有だったとか」
「ちょっと、いいかげんにしてよ」
「冗談よ。
ただ、登記は調べてみないと
わからないってこと」
「固定資産税はちゃんと払ってるわよ」
「共有の場合、代表者にしか
納付書は届かないの」
「そうなの?」
「そうよ。
だから、代表者が共有者の分も
立て替えて払ってる形なの」
「へ~、知らなかった」
「市役所も全員に納付書を送るのは
大変でしょ」
「そうね」
「だんだん気になってきた?」
「何が」
「登記簿、見てみたくなったでしょ」
「別に」