(前回のおはなし)
ねずみも、
なんだか調子になってきたみたい。
「じゃ、旧登記簿の次は、
登記用紙の変遷の話ね。」
「登記用紙?
あ~、古い用紙には丁区とか
戊区...?とかあったりする!」
「そう。よく知ってるね。
じゃ、土地と建物で用紙が違うのは
知ってる?」
「え?わかりません...。」
土地と建物で用紙が違う...?
どういうこと?
「明治32年に不動産登記法が
施行されて、
それまでの地所登記簿、建物登記簿から、
土地登記簿、建物登記簿に移行されたんだけど、
その時に、土地については
表題部(土地の表示)、甲区(所有権)、
乙区(地上権・永小作権)、丙区(地役権)、
丁区(先取特権・質権・抵当権)、戊区(賃借権)
という様式になっていた」
「建物は違うんですか?」
「建物については、
表題部(建物の表示)、甲区(所有権)、
乙区(地役権)、丙区(先取特権・質権・抵当権)、
丁区(賃借権)という様式になっていた」
「わかった!
建物には、地上権・永小作権がないからですね」
「そのとおり。
その後、大正2年に不動産登記法施行細則が
改正されて、表題部(土地の表示)、甲区(所有権)
乙区(所有権以外の権利)となる」
「今の甲区、乙区と同じ分け方ですね」
「そう。でも、まだ土地と建物は様式が別だった」
「土地の表示、と建物の表示、ですか。
地味な違いですね~。
いつ統一されたんですか?」
「土地と建物の様式が統一されたのは、大正5年。
不動産登記法施行細則が改正されて、
表題部が(不動産の表示)になった」
「あ、意外とすぐだったんですね」
「そう。でも、まだ表題部と甲区はくっついてた」
...表題部と甲区がくっついてた?
1枚の用紙に印刷されてた、ってこと?
「あ、わかります。
表題部があって、二つ折りしたその裏側に
甲区が印刷されてるんですよね」
「そうそう。表題部と甲区が別々になったのは
昭和26年のことなんだ」
「ふ~ん、勉強になりました」
「もちろん、様式が変わったからといって
すぐに用紙を替えたわけではなくて、
在庫の用紙を使ってたりするので...」
「なるほど。でも、ひとつの目安になります。
ありがとうございます。」
「あと、様式は変わってるけど、その都度
登記用紙を移記してるわけじゃない。
移記が行われたのは、
地所登記簿・建物登記簿から、
土地登記簿・建物登記簿に移行されたときだけ。
『舊登記簿~から移記』ってやつね」
「それ以外は?」
「様式の変更後に初めて登記された
土地・建物については新しい用紙を使うけど、
それ以前から登記されてた土地・建物については
移記せず、継続用紙だけ新用紙を使ってる」
「継続用紙、というと...?」
「記載事項が増えて用紙がいっぱいになった時に
新しい用紙を追加するの」
あ~、そういえば、
登記簿の途中から、用紙が変わってたりする!
「そういうことか~。
わかったような、わからないような...。」
(つづく)