世間はゴールデンウィーク最終日。
高速道路は大渋滞。サービスエリアは地獄絵図。
だが渋滞とは無縁のおじさんは、静かに八王子・戸吹グラウンドへ降り立った。
東京都シニアサッカー 都リーグ2部 第2節。
相手は昨年1-2で敗れたZIIGAさん。
「今日は負けられない。」
そう思いながら、45歳GKはボルタレンを飲み込み、肩に“今日だけ動け”とお願いする。
W-upでは入念にストレッチ。
キャッチ練習。
そして1人ダイブ祭り。
傍から見たら、ただ芝生に転がるおじさん。
でも本人は超真剣。
“この積み重ねが未来を変える”と信じていた。
前半10分。
ボランチのミスからロングシュート。
来た。
俺は飛ぶよ。
今までのダイブ練習を全部乗せしたような完璧な伸び。
指先に触れた。
…だが弾き切れない。
ボールはポストとクロスバーの角へ。
「カンッ!!!!」
という、GKの寿命を縮める音。
努力は報われる。
…そんな言葉を昔は信じていた。
でも今は分かる。
⸻⸻⸻⸻
努力は、
“正しいタイミングで”
“正しい場所で”
“十分な量をやった時だけ”
報われる。
⸻⸻⸻⸻
つまり、おじさんの努力はまだ足りなかった。
前半終了間際。
相手FWと1対1。
ここで追加点なら試合終了。
でも俺は飛び込まない。動かない。
「撃てるもんなら撃ってみろ。」
45歳、人生経験だけで立つGK。
コースを消し、相手のシュートをストップ。
今日イチのファインセーブ。
脳内では観客5万人がスタンディングオベーション。(そんなにいるわけない)
後半。
1点ビハインド。
相手のクロスをしっかりキャッチ。
落とさない。
こぼさない。
ウールシュポルト ハーフネガティブ × ウルトラグリップスプレー。
これはもう接着剤。
ほぼ工業用品。
そして後半ラスト1分。
DF→ボランチ→SMF→クロス→FW。
東京ベイ、芸術的な崩し。
シュート!!!
突き刺さる!!!
「うおおおおお!!!!!!」
歓喜。
咆哮。
ベンチ総立ち。
…からの。
オフサイド。
え?
待って。
今の?
確かに1人目はオフサイドポジション。
でも触ってない。
後ろから来た選手が決めた。
なのに。
オフサイド。
戸吹グラウンドに、おじさんの魂が静かに散った。
悔しい。
本当に悔しい。
でも最後はグッドルーザーでいたい。
相手選手、審判団に感謝。
次節は23日(土)。
足りないのは球際。
セカンド回収。
そしてその後の一本。
GKは焦らない。
騒がない。
ボルタレン飲んで、また立つだけ。


