赤ZUKINちゃん10 | ぶーさーのつやつやブログ

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艶が2次小説と薄桜鬼ドラマCD風小説かいてます。


「高杉さん」

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「高杉さんっ」

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「高杉さんってば!」

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「こんなところで寝ていては風邪をひきますよっ!」


目の前には何故か、沖田の顔があった。


「うわああああああああああああああっ!!!!!!」
「わぁああああっ!!!な、なんですか!もうっ!」
がばっと起き上がって絶叫した声に驚いて沖田も大声を上げ、掴んでいた高杉の左腕をぱっと離した。


直後、廊下は次々に開けられたドアの隙間から差し込む光で明るくなった。


「なんしゆうが?」
「どないしはったんどすか?」
「どうしたんですか?」
「どうしたの?」
部屋から出てきた龍馬と俊太郎と翔太と慶喜が2人に駆け寄った。。


「あ、起こしてしまって・・・すみません・・・」
何故か沖田が皆に頭をペコペコと下げる。


「・・・わたしがトイレに行こうとしたら、高杉さんがこんなところで眠っていたので起こしていたんですよ・・・そしたら突然大声を出して」
なんで私が皆に謝らなきゃいけないんだ、と抗議する目で高杉を見降ろす。


「おまん・・・器用じゃな」
龍馬は沖田の横に立って高杉を見降ろす。


「危ないですよ、そんなところで眠ったら」
翔太は半分バカにしたような顔で高杉を見降ろす。


「そうどす、通行の邪魔になりますえ」
俊太郎は個性的な意見を言って高杉を見降ろす。


「・・・ふわぁあ・・・飲みすぎたんだね、きっと」
慶喜はあくびをひとつしてから呆れ顔で高杉を見降ろす。


「はい、立って。ちゃんと自分の部屋で寝て下さいね!」
沖田に手を差し伸べられて、ようやく自分が居た場所を把握した。


2階から階段を3・4段降りた場所、つまり階段で寝ていたのだ。


「・・・え・・・あれ?」
5人の顔を一人一人見上げて、沖田の手を掴む。引き起こされて階段を上ると「まったく、目が冴えてもうたわ」「ふわぁああ、おやすみー」とその場に集まった皆がそれぞれ自分の部屋へと戻って行ってしまった。


最後に残った沖田と2人きりになってとりあえず謝っておく。

「わ、悪かったな」
「いいんです、でも本当に危ないから気をつけて下さいね」
いつもの優しい表情で笑って、おやすみなさい、と自分の部屋のドアを開けた。
そのドアを手で掴み、沖田を呼びと止める。


「あ、その・・・ここで寝てたの・・・俺だけ、だよな」
高杉の問いかけに、当たり前じゃないですか、こんなところで他に誰が寝ると言うんです?とくすくす笑いながら部屋の中へ入った。


バタン


1人取り残されて、仕方なく自分の部屋へと歩き出す。
ドアを開け中に入ると、急に眩暈と軽い頭痛が襲ってきて首元を強く押さえる。

あんなバカげた夢見るなんて、最低な悪酔いしちまったな・・・・

ベッドの脇で乱雑に服を脱ぎ、大の字になってそのまま勢いよく倒れ込んだ。



「ぅわっ!」
ベッドの感触に違和感を抱いて、勢いよく飛び起きてすぐにベッドサイドのスタンドライトを点けた。


「な・・・んだこれ?」
毛布の下がこんもりと盛り上がっていたので恐る恐る毛布をめくると、そこには少女がすやすやと小さな寝息をたてて眠っていた。


「・・・はぁ?」
溜息のような疑問のような声を出して、信じられない光景に目を見開いた。


なんだってんだ、一体。これはまた夢だったりすんのか?

古典的だが、と思いながら確認の為に自分の頬をつねってみる。

「いって・・・」

つねった部分を擦りながら、どうしようかと考える。

その前に、なんでここにいる?
さっき自分の部屋に戻ったんじゃなかったのか?

少女が土方の部屋から出てきたところも夢だったのか現実だったのか、もはや区別がつかなくなってきた。
声を押し殺してあぁーーーっと頭を掻きむしった。


まずはいったん冷静になろうと、ゆっくり息を整えながら床に視線を落とす。


「・・・お、おい・・・ふざけんなよ・・・」
下着の異常に気付いて思わず独りごとで自分に突っ込む。

チラッとベッドの上を見て少女がこちらに背を向けて眠ったままなのを確認すると、前の部分が濡れた状態の下着をその場に脱いで全裸になる。


「・・・」
ここで目覚められたら厄介だなと、スタンドライトの調光つまみを絞ってからクローゼットの中を探る。

さっきの夢のせいかよ・・・ったく、10代のガキじゃねえんだから。
苛立ちながら小さく呟いて手際良く下着を履き、部屋着のパンツに足を通した。

クローゼットを静かに閉めて、ベッドの方を振り返る。


「・・・はああぁ」
やっぱりこれは自分の夢か幻か妄想か、振り返った時にはベッドの上には何もなくなっているんじゃないかと期待してみたが、そんな筈はなく、しっかりと現実であるという証拠がそこにあった。

仕方ない、これは現実だと受け止めることにしてこう考え始めた。

そもそもこの少女自体が誰かのサプライズではないのか?
こんなイタズラを思いつくやつは誰だ?
いつも俺に厭味ばかり言う藍屋か?
風呂場での一件だって、あり得ないだろ。
さっきの夢・・・だって・・・誰かが酒に変なもの混ぜたんじゃねえか?
だったら土方か?

いくつも疑念と男たちの顔が浮かんでは消え、答えは出ないまま唸り声を上げて再びベッドに近寄る。


「ぅ・・・んん・・・ん・・・」
小さく言いながら少女が高杉の立つ側に寝がえりを打って、思わずびくっと肩が跳ねる。


「・・・ったく」


いつまでもこうしてる訳にもいかない。最善策はまずこいつを起こして部屋へ返す、だな。
俺の部屋に居た事は誰にも言うなよと、口止めをして・・・。
うんうん、それがいい、と頷いて少女の肩を軽く揺さぶる。


「おい、起きろ、おい」
囁き声で何度かゆさゆさ揺すると、少女が重たそうに瞼を開けた。


目が合うやいなや「・・・もう、朝・・・?」と瞼を擦る。
寝ぼけているのかなんなのか、少女の言葉に耳を疑う。


「・・・いや、まだ深夜だが・・・ここ自分の部屋じゃないぞ、起きろって」
「うん・・・わかった・・・起きる・・・」
ゆっくりと上体を起こしてもまだ、今にもまた眠ってしまいそうな様子だった。


高杉はベッドに腰をおろして、少女の意識がはっきりした頃を見計らって話しかける。

「・・・ところで、なんで俺の部屋で寝てるんだ?」
「・・・うん・・・あのね、おトイレ探して、間違えて隣のお部屋に入っちゃったの・・・」
「・・・え?」

少女はふふふ、と笑って恥ずかしそうに説明を続けたが、まだ寝ぼけているのか舌っ足らずな調子で普段以上にのろのろと話す。

土方の部屋に間違えて侵入したのち無事トイレで用を済ませたのだが、部屋に戻る途中この部屋のドアが少し開いていて、声をかけたが誰もいなかったのでここのベッドで眠ってしまったという事だった。


肝心な部分が抜けていてやっぱりよく分からなかった。


「なんで誰もいないからってここで寝るんだ?」
「・・・だって、あのお部屋のベッド、ふかふか過ぎて落ち着かないんだもの・・・ここあなたのお部屋?」
「・・・ああ」

そっか、ごめんなさい、お部屋に戻ります、と座ったままで頭を下げる。


その時、コンコンとドアをノックする音がして、反射的にめくったあった毛布を少女に掛けた。
どくどくどくどく心臓が暴れまわる。


だ、誰だ、こんな時間に。
こんな状況を見られたら、絶対に誤解されるに決まっている。


部屋の灯りを消して、息を殺してドアの方へそろそろと近づくと
「高杉さん、起きてるの?」
遠慮がちにボリュームを押さえた慶喜の声がドアの向こうから聞こえてきた。


「!!」
話し声がうるさかったのか?
とりあえず何とかやり過ごしてから少女を部屋から出そうと決めて、ほんの少しだけドアを開けた。


「ん?どうした」
「あ、やっぱり起きてた。なんか壁越しにこっちから声が聞こえてきたから。もし高杉さんじゃなかったら怖いな~と思って確認しにきちゃったよ、部屋に誰かいるの?」
きっと沖田か誰かと部屋で話してると思ったのだろう
「おばけじゃなくて良かった」
と笑顔になる。


「あ、ああ、すまなかったな。もう寝るから・・・」
一刻も早く部屋の前から去ってくれ、とドアを引いて閉めようとしたが、逆に廊下側に大きく開かれた。
慶喜がドアを引いたのかと思ったが、どうやら表情から彼がやったわけではない事が読み取れた。


「・・・あ・・・」
それを言ったきり、慶喜は目を見開き、口をぱくぱくさせていた。


「え?」
背後に気配を感じた瞬間、少女が部屋から出てきて「お部屋もどりますね、おやすみなさい」と階段の方へ歩き始めた。


「あ、おい!」
少女の背中に声を掛けながら、引きとめて慶喜に事情を話さねば、と追いかけようとしたが真正面から慶喜に肩をぐっと掴まれて自分の部屋へと押し戻された。


「・・・」
黙って高杉を見つめる慶喜の手に力がこもり、掴まれた肩がぎりぎりと痛い。

「ちょ、ちょっと待て。俺がさっきまで階段で寝てたの忘れたのかよ!」
「あっ・・・」
痛みに歪められた顔で必死に訴える高杉の言葉にはっとして肩を掴んでいた手を離した。


「全く、先に話聞けってえの」
まだじんじんと痛む自分の肩を撫でながら、ベッドに座る。

「ごめん、ついカッとしちゃったよ」
「・・・」
何気ない慶喜の一言に驚いた顔をしてしまい、表情を悟られない様に顔を背ける。

部屋から戻ると少女がベッドで眠っていた事と、なぜここにいたかという事を簡潔に説明した。そして、勘違いされては面倒だと思って、慶喜が部屋に帰ってから少女に戻ってもらおうと思っていた事も。
当然、その前に訳あって着替えたりした事などは伏せておいた。

一通り話を聞いてすっかり納得した様子で
「ほんと、あの子には驚かされっぱなしだね」
慶喜は、あははと軽く笑った。

「ふっ、まったくだ」

それじゃ戻るよ、肩ごめんねと謝って慶喜は部屋を出て行った。

高杉は座った体勢からベッドに寝そべって、「ついカッとして」という慶喜の一言の意味を考えていたが、いつの間にか深い眠りへと落ちていた。




≪赤ZUKIN11へ続く・・・≫