婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)はその名の通り「女性の宝」であり、とても人気がある漢方薬です。漢方薬としては珍しい、甘くて飲みやすいシロップ状です。

 

婦宝当帰膠の【効能・効果】は次のように記載されています。

『更年期障害による下記疾患:

冷え性、貧血、生理不順、生理痛、腹痛、腰痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り』

 

また【成分・分量】は次のようになります。

『本品1日量8mL中、下記成分及び分量を含有します。

婦宝当帰膠エキス・・・4.3mL

(トウキ 5.52g。オウギ・ジオウ・シャクヤク・ブクリョウ 0.36g。カンゾウ・センキュウ 0.16g。トウジン 0.36g

アキョウ 0.36g

 

【効能・効果】に「更年期障害」とあるように、「卵巣機能の低下」に伴うエストロゲン(エストラジオール)の減少状態に用いられることが想定されているのだと思われます。

 

さて、婦宝当帰膠の内容を見てみましょう。

とりわけ含有量が多いのは「トウキ」で全体の69%にもなりますので、トウキの働きが中心になることは容易に想像できると思います。

トウキの働きについて専門書で調べてみると「補血調経」(血液を補充して月経を調える)、「温中止痛」(お腹を温めて痛みを止める)などとあることからも婦人科に用いられる生薬であることがわかります。

 

婦宝当帰膠の成分をさらに詳しく見ていくと、トウキに加えてシャクヤク、センキュウ、ジオウが配合されていて、これは補血(血液を補充する)作用があることで有名な四物湯(しもつとう)と同じ構成となります。(ここまでで全量の80%を占めます)それにアキョウ(ロバの皮から抽出した変性コラーゲン質)が加わることで補血作用を強化しています。

さらにオウギ・ブクリョウ・トウジン・カンゾウは気(エネルギー)を補充することで代謝を促進して補血しやすくしています。

また全体の69%を占めるトウキが温める力が強いので、冷えやすい方に向いています。

 

先程から「補血作用」と書いていますが、これは漢方で言うところの「血虚(けっきょ)」(血液不足の意味)を改善する作用です。

 

それでは「血虚」とはどういう意味なのでしょうか?

血液不足と言いながら、漢方の世界ではいわゆる貧血とは少し意味合いが異なるのですが、簡単な言い方をすれば全身の栄養不足・潤い不足ということになります。

栄養不足と言っても、必ずしも食生活が悪いという意味ではありません。老化や体質虚弱などの問題によって新しい元気な細胞が作れなくなっている状態です。

 

例えば若い頃の肌はピンク色をしてツヤがありますが、年齢とともにピンク色が抜けてツヤが失われて乾燥しやすくなります。これも血虚によるものだと考えられています。白髪が増えたり、髪がパサパサになるのも同様です。

また、添付文書に記載されている生理不順、生理痛、腹痛、腰痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴りなども血虚が関係しているものがかなり沢山あります。

 

一般に血液と言えば血液自体を想像するのが当然ですが、エストロゲンなどの女性ホルモンも関係していると考えるのは東洋医学の面白いところですし、漢方薬を効果的に利用するためにも大切な考え方のひとつです。

 

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