散歩にハマッているのである。
散歩が好きで始めたわけでは、けっしてない。
ただ、必要に迫られて、やっているのである。
運命を受け入れるタイプなので、「どうせ、やらなければならないことならば‥‥」と喜んでやるようにしているのである。
そして、楽しくなってきたのである。
散歩というぐらいであるからして、歩くわけであるが、ただボーッと歩いていても退屈なのである。
昔は、うちの近所のアウトレットなんかを歩いていたのであるが、ここは散歩には向かない。
歩数は増えず、出費がかさむばかりなのである。
さらに、うしろめたい気持ちになり、奥さまと目が合わせられなくなる。
その挙動不審な態度が疑いを呼び、そして、ばれ、叱られ、正座する‥‥という悪循環をつくるのである。
よって、最近はこのあたりの散歩は切り捨てた。
ま、平版の断捨離というやつである。
で、どうせ歩くなら、心洗われるような場所がよいとつねづね考えていたのであるが、最近、一ついいところを見つけたのである。
うちの事務所からクルマで15分ほど行ったところの大阪府箕面市という田舎なのだが、そこに“箕面の滝”
と呼ばれる、すごくもしょぼくもない滝があるのである。
この滝は、山奥の谷深くにあるので、最寄りの駅から2.7kmも遊歩道を歩いていくのである。
この渓谷が遊歩道になっており、茶店なんかもあって、この地域の名物であるもみじの天ぷらを売っていたりするのである。
大阪府民にとって、箕面のもみじの天ぷらといったら
、けっこうおなじみなのである。
これは、広島の名物のもみじ饅頭とはまったく違う。
本物のもみじの葉っぱを1年間塩漬けにしてあく抜きし、天ぷらにするという超本格派なのである。
もみじといっても、食べられるもみじの葉っぱが使われているのである。
そして、あの太宰府の梅ヶ枝餅屋
さんのように、「ちょっとだけでも、売りますよ」というのがあるのである。
私も人生で始めて食べたのであるが、それはそれは、超甘くて、血糖値がみるみる上がりそうなシロモノであった。
なぜならば、ふつうの天ぷらではなく、衣がまるで超甘々のかりんとうのようなのである。
事務所にもおみやげに買って帰ったのであるが、とても好評であった。
はっきり言う。激ウマである。
ちゃんともみじの葉っぱが入っているのだが、食感はまるでない。
衣の味が強すぎて、ほとんどかりんとうを食べているようなウマさである。
ところが、あとを引き、やみつきになるのである。
さて、遊歩道の話に戻ろう。
その渓谷の深い場所を私がはじめて歩いたのは、10月の半ばで紅葉の時期も過ぎているようなころだったのである。
ところが、平日だったにもかかわらず、私と同じような目的のおじいちゃん、おばあちゃん、市民ランナーが多数いるのである。
当然、人がいるところには市も立ち、おみやげ屋さんやおしゃれな喫茶店がある。
しかも、「おいしいランチあります」なんて書いてあったりして、心躍る散歩道なのである。
そして、なにがうれしいかというと、この私が、である。
おじいちゃん、おばあちゃんを抜き去ることができるということに尽きる。
ああ、ついにこの日が‥‥。
いままでは、町をよたよたと歩いていると、邪魔にされたり、うしろから追い抜かれることがあったとしても、人を追い越すことなどはまずなかった、この私が、である。
「ちょっと、すいませんねぇ♪」などと言いながら、追い越すのである。
ああ、快感‥‥。
「お年寄り相手に、なにを喜んでいるのか?」というお声もあろう。
言いたければ、言うがいいさ。フフッ。
下りのエスカレーターですら歩いて降りることのなかったこの私が、人を追い抜く日がくるなん‥‥。
そして、この遊歩道を2.7km歩いた終わりに箕面の滝があるのであるが、この散歩道、なにがすごいって、2.7km歩いたら、必ずまた2.7km歩かないと帰れないことなのである。
必然的に5.4kmも歩いてしまうわけである。
疲れ切って到着するゴール付近には、箕面温泉スパガーデン
が待っている。
ここで汗を流すのが、最近の私の休日のパターンとなっているのである。
また、近々、みなさんにもみじの天ぷらをおみやげにお持ちする所存であります。