お祭りだった。
フィリピンの祭りというのは、集落にある教会がからみ、一応は神事らしいのだが、私からしたら、うるさいだけの恐怖の行事だ。
各家庭では、不特定多数にご馳走を振る舞われるが、どれだけの客が来た、とか、ブタを何頭潰した、とかが、ステイタスを上げる要因になるようで・・・
隣の叔父さんの家も、2週間くらい前から、生きた豚さんが、井戸の前に繋がれていたが、祭り当日の早朝に、豚肉にされてしまっていた。
私は、前日から盛り上がる大音量のディスコ対策で、耳栓を装着し就寝していたために、豚さんの断末魔には気付かず、起きた頃には、すでに解体され、ただでさえクソ暑いこの時期に、リビングのすぐ向こうで、次から次へと薪でガンガン、ブタ料理を調理され、私が燻されるかと思ったよ・・・
昔は、ウチも金もないのに、夫の見栄だけでご馳走を振る舞う、なんてことをしていたが、夫が来日した時点で、これ幸いとやめさせていただいた。
それでも、子供たちがいた頃は、それなりに祭りには参加していたが、もう一人だしね・・・
ひっそりと、過ごしたい・・・
というのが、心からの本音だが、あれだけ遠まわしに、
「もう招待しないで。」
という意思表示をしているにも関わらず、相変わらず、律儀というか、いや、もしかして、もはや嫌がらせなのかは定かではないが、一部の親戚から未だにご招待を受ける・・・
ウチの集落の祭りの半月ほど前に、隣の集落の祭りがあり、両替屋を営む叔母さんからも、直々に電話をしてきて、ご招待を受けた。
「ああ、うん。行きます。ありがとう。」
と、言ったものの、一人で行くのもなんだし、と、申し訳ないけど、バックレた。
ま、どうせ。
私、一人、行かなくても、わからんだろう・・・
その数日後、夫から連絡があり、
「隣の集落の祭り、行かなかったの?」
と・・・
ありゃ?バレてたか?
どうやら、両替屋の叔母さん、日本にいる夫にわざわざ連絡したようで・・・?
もうすぐ、ウチの集落の祭りだし。
この際、はっきり言わせてもらおう。
「あのさ、ぶっちゃけ、招待されるの、迷惑なんだわ。」
昔はそうでもなかったけど、引きこもり生活中の私にとっては、何が楽しいのか知らんが、終始、ハイテンションで、まさに箸が転がっても爆笑している彼らの中にいるのはつらい。
しかも、私は一人・・・
しかも、豚肉三昧のご馳走なんぞ、食べたいとは1ミリも思わないしね?
つまり、フィリピン人にとっては、楽しいイベントかもしれないけど、私にとっては、まったく楽しくないんだよ。
なのに、わざわざ、一人でのこのこ出かけていく意味がわからん。
だからさ、アナタの親戚連中に、私をわざわざ招待するなって言っておいて。
気持ちだけ、有難く受け取っておくからさ。
と、夫にはオブラートにも包まず、ありのままの私の正直な気持ちを伝えたのだった。
で、祭り当日・・・
確か、昨年は、奥の集落の叔母さんから、メッセージが着たんだったよな。
行きたくないがために、わざわざ、日本人の祭りに出かけて行ったんだよな。
なんて、思い出していたが、夕方になっても、今年はメッセージは届かなった。
面と向かって言えないことだが、こうして関係者に、何気なく伝えておけば、ちゃんと伝わるのは、フィリピンのいいところだと密かに思う。
今年は、回避できる!と、一人、ほくそ笑んでいたのだったが・・・
18時過ぎに・・・
電話がかかって来た。
両替屋の叔母さんから。
「一人じゃ恥ずかしいから来れないんだって?今から、迎えに行くからね!」
うん?
ぜんぜん正しく伝わっていないじゃん・・・
クソっ!
「いえ、結構です。今から伺います・・・」
と、電話を切り、奥の集落に出向きましたよ・・・
で、久々に、ブタの丸焼きをいただきましたよ・・・
で、先日の、隣の叔父さんの裏門事件を一通り親戚連中に話し、
「やっぱ、あの人、頭がおかしいね!」
と、盛り上がり・・・
フルーツサラダまでいただき、さっさとお暇させていただきました。
あれだけはっきり夫には言ったのだが・・・
真意が伝わらなかったのか・・・・
と、思ったが、いや、逆にこれは、嫌がらせの方か・・・?
もう、諦めて、毎年、大人しくご招待を受けることした方がいいのかもしれない・・・