フィリピンで、野菜を買う、ということは、意外に難しい。

 

まず、種類が少ない。

 

スーパーに並んだ商品は、日によって、極端に種類が少ないし、おまけに、これは売ってもいいものなのか?と、唖然とするくらいに質が悪い時も頻繁にある。

 

いや、これ、完全に腐ってるだろう?

 

と、思うものもあるが、それは完全に手に取って購入したものの責任という考え方なのだろうか・・・

 

スーパーで売られているものは、ラップに包まれているものもあり、目を皿のようにして品定めをしても、中が腐っていた、虫が喰っていたなどというのは日常茶飯事で、すべては運次第というなかなかに刺激的だ。

 

買い物はなるべく一か所で済ませたいが、生鮮食品に関しては、市場の方がやはり質もよく、値段も安い。

 

それに、市場は店が何軒もあるので、品定めもできるしね。

 

と、最近は、めんどくさいけど、野菜だけは、市場にわざわざ足を運んでいる。

 

 

その市場でも、質も品揃えもまぁまぁな店というのは、限られていて、必然的に、いつも同じ店で買ってしまうようになる。

 

 

先日も、ここ最近、頻繁に買っている八百屋に出向いた。

 

店主らしきオバちゃんが、電気の請求書を片手に、周りの人に何やらわめいていた。

 

何かトラブルだろうか?

 

と、思いつつも、店の従業員であろう若い兄さんは、黙々と仕入れてきてばかりと思われる野菜を店頭に並べていたので、私も気にせず、品定めをしていた。

 

 

聞くともなしにオバちゃんの訴えを耳にする。

 

どうやら、電気代の請求書通りに支払ったが、突然、電気が止められ、どういうことか電気会社に行ってみたら、いつのだかわからない遅延料の10ペソちょっとの支払いが終わっておらず、無情にも電気を止められた・・・というものだった。

 

 

「だいたい遅延料の10ペソだって、こんな隅っこにちょこっと書いてあるのなんて、気が付くわけがない!」

 

と、怒り心頭である。

 

 

オバちゃんの訴えを聞いていた一人の男性が、

 

「まぁ、でも、遅延料払っていなかったあんたが悪いんじゃん?」

 

と、身も蓋もないことをあっさり言うもんだから、オバちゃんはますますヒートアップしていく。

 

 

おそらく・・・だけど。

 

オバちゃんは、別に正論が聞きたいわけじゃーないんだよ・・・

 

酷いねって、共に怒ってくれるだけで、気持ちも治まるんじゃないかな?

 

 

 

とはいえ、私にはまったく関係ない話だし。

 

オバちゃんには目もくれず、じっくり品定めをし、黙々と品出しをしていた兄さんに、会計をしてもらう。

 

 

すると、突然、オバちゃんが私の前にやって来て、

 

「ねぇ?これ、どう思う?」

 

と、電気会社の請求を私に見せて、さっきも聞いたこれまでの経緯を私に説明を繰り返す。

 

 

「こんなところに遅延料が書いてあっても、わかるはずないよね?」

 

と、請求書を目の前に突き出す。

 

 

同じマクタン島なので、オバちゃんの突き出した請求書は、ウチに来るものと同じもので、見慣れたものだ。

 

オバちゃんが指さした「遅延料」なるものは、宛先の下に記載され、電気料金合計金額が書かれたところとは別で、わかりにくいといえば、わかりにくい。

 

「あたしゃー、今まで、何十年も払ってきたけどさ、こんなもんがこんなところに書かれていることなんざー、ぜんぜん知らんかったし!」

 

と、熱く訴える。

 

 

確かに。

 

私も知らなかったよ。

 

遅延料も、電気代に加算して記載してあればわかりやすいのにね。

 

 

しかし、私に言われてもさ・・・

 

しかも、私、外国人よ?

 

ハポネッサ(日本人女性)よ?

 

まぁ、そうは見えないから、さっきからビサヤ語でガンガン話しかけてきているんだろうと思うけど。

 

 

「き、厳しいね。とりあえず、もう一度、電気会社行って、窓口の人じゃなくて、マネージャーとかに事情を説明してみれば?」

 

フィリピンでは窓口にいる人は、言われた通りのことを言われた通りにしかやらないように躾けられていて、イレギュラーなことには対応できないことが多いから。

 

「え?」

 

と、オバちゃんが目を輝かせる。

 

「いや、わからないけどさ、別に払わないってわけじゃないんだから、ちゃんと偉い人に事情を説明してみれば・・・」

 

「そうか、そうだよね。」

 

 

いやいや、マジでそれで何とかなるかは知らんよ?

 

 

その時、ちょうど私の買った野菜の合計金額が出たようで、奥から兄さんが、

 

「302ペソです。」

 

と、言ってきた。

 

すると、オバちゃん、

 

「300ペソでいいよ!」

 

と、2ペソおまけしてくれた。

 

 

「あ、ありがと。」

 

 

オバちゃんは、早速、電気会社に出向くつもりなのか、店の奥に引っ込んで行った・・・

 

 

 

電気会社の対応次第では、次にこの八百屋に行った時の対応が違うかもしれない・・・