夫の祖母が亡くなったのは、もう20年以上前になるが、今から5年くらい前に祖母の名義だった土地の名義変更が行われた。
どういう経緯でそれぞれの子供たちに分けられたのかは、よくわからないけど、結局、先に家を建て住んじゃった者勝ち、みたいな感じで、私の住んでいる家の土地は問題なくママの名義になり、以降、税金などは私がしっかり払っている。
隣の叔父さんの、反対側の土地は、夫の祖母が亡くなってからも住み続けていた独身の酒乱の叔父さん名義にするはずだった。
闘鶏用の鶏のカリスマブリーダーだったようだが、定期的な収入はなく、たまにあってもすぐに酒代に消え、生活の面倒は、きょうだいで見ていたらしい。
ある時に酔っぱらって行きずりのバロット売りを刺し、重傷を負わせ、親戚のいるセブの山奥に逃げた後、アメリカに嫁いだ叔母さんと、近所で両替屋を営む叔母さんがまとまった金を用意し、酔っぱらいの叔父さんから買い取った、という話だ。
知らんけど。
で、両替屋の叔母さんの土地は、洗車場、夜はライブハウスになり、しばらく騒音に悩まされていたが、私の予想通り、長くは続かず、今は静かになっている。
洗車場と隣の叔父さんの家の間は、アメリカに嫁いだ叔母さんの名義だということだったが、何しろ、アメリカに住んでいるので、そのまま放置され、隣の叔父さんの飼っている鶏や物置となっていた。
そのことに以前から不満を持っていたアメリカの叔母さんが、とうとう動き出し、家を建てている。
ある日、突然、それまでアメリカの叔母さん名義の土地にあったものが、我が家の横に移動されてきて、以前より鶏の鳴き声は激しかったが、更にうるさくなった。
加えて、私にとってはゴミだろう?、といういろいろなものが所せましと運び込まれた。
果たしてどこまでがママ名義の土地になっているのかはよくわからないけど、たぶん浸食されていると思う・・・
しかし、よそ者の私にとっては、別にモヤモヤする話でもなく、現在の家が脅かされないのであれば問題はない。
鶏や、アヒル(カモ?)の鳴き声や糞害なども、たまにキーっとなることはないこともないが、所詮は一時のことで、気にしなければ気にならない。
そうやってただただ自分の心の平穏を保って生きてきた。
敢えてそうしようと思わなくともできるようになったことは、在住20年以上の成果といってもいいだろう。
アメリカの叔母さんの家を建て始めたのは、確か今年の5月くらい。
家がどのくらいで出来上がるのかはわからないけど、今、住んでいる私の家は確か2か月くらいでとりあえず住めるようになったと記憶している。
しかし、9月になった現在も、工事中・・・
6月にも、進捗状況を見に来ていた叔母さんだが、またアメリカから来ている。
今度は、夫と一緒に。
律儀にも、また私にもお土産(チョコレート)をくれた。
その際、隣の叔父さんの悪口を散々、言っていた。
彼女の話だと、今回、家を建てたのは、このままでは、兄である隣の叔父さんに自分の土地を奪われてしまう、という危機感があったらしい。
しかし、家を建てたところで、自分で住むつもりもなく、人に貸す予定もないという。
「たまに、セブに来た時に、ここに泊まるつもり。」
これ・・・
セブが好きで何度も来ている日本人も割と言うんだけどさ。
例えば、1年に何度か来たとして、いきなり快適に住めるはずはないんだよね。
私に言わせれば、新たな問題の種をわざわざ作ったようなもんだけど。
まぁ、この話は、以前にもネタにしたけどさ。
それでも、アメリカの叔母さんは、このまま兄である叔父さんの好き勝手にするのは我慢がならなかったようだ。
「だいたいさ、土地の名義変更だって、お金がかかるじゃん?それ、未だに払ってないしね!」
そうそう。
ママの名義に変更するときに、土地の測量だけでもまとまった金を請求されたし、変更する手続き代も結構な金額だった。
え???
それ、隣の叔父さん、払ってないの?
まさか、叔父さんの分を、他の人で頭割りされたわけじゃないよね?
と、恐る恐る聞けば、叔父さんの分は、両替屋の叔母さんが立て替えているとのこと。
まぁ、金がないのは理解するけど、その割にいろいろと図々しいね・・・
と、他人の私ですら思うよね。
ないもんはない!と、開き直られると、行き場のない怒りはどう収めればいいの?と、モヤモヤするけど、こちらの人は、それで済ませてしまう人がほとんどである。
たいへんねぇ・・・
と、同情するが、所詮は他人事だったりもする。
そんな達観した私であるが、言いたいことは言うことにしている。
ここのところ、まとまった雨が短時間に降る。
ゲリラ豪雨というヤツだ。
セブの方では、道路のあちこちが冠水し、デパートの駐車場の車が無残にも水没したというニュースを聞いた。
何年か前に、長い間、鬼渋滞を起こして、道路に埋め込んだ排水溝は、あまり役になっていないようだ。
幸い私の住んでいる地区は、それほど雨も降らず、我が家の浸水は免れていたが、叔父さんが勝手に作った仕切りのせいで、我が家のテラスの前に水たまりができるようになった。
それが、何日もはけないので、やがて臭くなる。
水の行き場をせき止めているので、当然といえば当然なのだが、そういう問題が起こって初めて、なぜにここに勝手にこんなものを?と怒りがフツフツと湧いてくる。
そこに叔父さんが通りかかったので、なるべく感情を乗せずに、
「これ、水がはかなくて、臭くなって困るんだけど。」
と、言ってみた。
以前から、この叔父さんは、キレやすく、ママをはじめとするきょうだい連中にはひどく嫌われていた。
しかし、私が日本人だからなのか、多少の遠慮があるようで、私に対してはあまりキレることはなかったのだが、長年住んでいるからなのか、ようやく身内と認識されたのかは不明だけど、ここ数年は、私に対してもキレるようになった。
きょうだいたちは、何がどういう理由かは知らないけど、こうしてキレた叔父さんに歯向かうことはせず、黙って言いなりになっているが、私はそういったしがらみはない。
何やらわめき出した叔父さんに、
「でも困るから、何とかして。あと、ウチの電線に、あなたが植えたパパイヤの木が引っかかっているから、それも切って。」
と、冷静に言い放ち、さっさと家の中に入った。
その後、叔父さんは、ブツブツ言いながらも、水たまりになる原因の仕切りを外してくれたし、パパイヤの木も切ってくれた。
キレ勝ちと思っている節もあるのかもしれないが、その熱でこっちまで熱くなっては話が進まないことは、今まで嫌というほど体験してきた。
我慢できることはして、できないことは、冷静に相手に伝える、というのが、私の精神の安定を続かせる手なのかな?と、思うようになった。
合掌。