彼女は、日本へ旅立っていった・・・



彼女の夫は日本人である。

ただ、その夫とは、何年も連絡が取れていない。

なので、当然、経済的にも援助もない。

彼女の暮らしは、次第に困窮していった・・・



彼女の夫に、どんな事情があるのかはわからない。

けれど、彼女も生きていかねばならない。


とはいえ、フィリピンでは、仕事がない。

彼女は、夫に頼らずに、生きていく決心をして、日本に旅立ったのである・・・



それなのに。



空港の入管で、入れてもらえなかった。



以前の私の夫と同じである。

「入国拒否」をされ、翌日の飛行機で、フィリピンに返されてしまった。






実は・・・

彼女には、子供がいる。


日本人の夫との間の子供だ。



幸運なことに、彼女の子供は、日本国籍を持っていた。


なので、彼女の子供は、一足先に、日本に行っていた。

まだ16歳という年齢だったが、生活のために、日本の工場で働く道を自ら選んだ。


日本国籍を持つ実の子供がいても、日本に定住する査証を取得するのは難しいのが現状だ。


ビザを申請しても、もらえるかどうかはわからない。

ビザがもらえない、という結果になった場合でも、どうしてもらえないかの説明は一切ない。



彼女は、子供と一緒に、日本へ行きたかった。

けれど、どういうわけか、彼女のビザはとれなかった。


それで、彼女の子供は、まだ16歳という年齢にも関わらず、一人で日本に行かねばならなかったのだ。

それでも、後からきっと、母が来てくれると信じて、頑張っていた。



彼女の子供が、日本に行ってから、1年半。

日本国籍を持つ子供に会いに行く、という目的で査証を取得した。



そして、彼女は、子供の元へ旅立ったのだ。



しかし。


日本には入国できなかった。



空港に迎えに来ていた子供にも、会えなかった。




彼女が入国を拒否された理由は、あるのだろう。


でも・・・


あまりにも、これは、ひどすぎやしないか・・・?



彼女に残ったのは、借金だけ。


飛行機代だって、日本に行って働いて返せると思ったから、借りたのに。




そんな彼女に、今日、会った。


彼女は一言・・・

「カプイ・・・(疲れた)」



彼女が、日本に行った子供に会えるのは、いつのことだろう・・・