よくフィリピン人が、ヘタな日本語で「ワタシ、カワイソウ・・・」と、言うけど、これまで、本当に、可哀相な人を、見たことはなかった。
けど、本当に、可哀相だなぁ、と、初めて、思った人がいる。
それは、隣りの家のメイドである。

彼女は、出戻りのメイドです。
以前、やはり、隣りの家に、姉と一緒に、住み込みで、働いていた。

ところが、ある日、気が付いたら、二人とも、いなかった。
フィリピンでは、よくあることなので、私も、いちいち、気にしてはいませんけど。

で、また新しいメイドが、来ていたりしていたけど、それも、いつの間にか、いなくなって・・・
というのを、何回か繰り返し、彼女が、戻ってきた。

今回は、彼女、一人である。

姉はどうしたのか、と思ったら、結婚したそうである。
そういえば、近所のウリタオ(独身男性)と、夜、イチャイチャしていたけど、もしかして、そのウリタオと?
そうだって。
それは、おめでとうございます。

さて、出戻ってきた、妹の方が、昨日の夜、ウチの前で、泣いているではないか!
「どうしたの?」
「ウー、ウー・・・」
号泣しているよ。
何?何?何があったのよ?
「どうしたのよ?」
と、もう一回、聞いてみると、
「足が・・・痛い・・・」だって。

電気の下に連れてくると、両足が、赤くただれている。
特に、指と指の間が、ひどい。
「どうしたの?これ?」
「ウー、ウー・・・」
相当、痛いらしい。

見たところ、アカギレのようだけど?
いや、ホントは、アカギレなんて、見たことないかも。
でも、何だか、アカギレのような、気がする。

隣りの叔母さんは、いつも、ゴム草履を履かずに、その辺を、歩いているから、なった、という。
確かに、隣りのメイドは、裸足で、ウロウロしている。
ウロウロしているところのひとつには、排水が貯まっているところも、ある。

やっぱり、これは、アカギレだよ。

母から送ってもらった「オロナインH軟膏」を、つけてみろ、と、渡す。
アカギレ、といえば、オロナインだよね。

メイドは泣きながら、つけている。
それにしても、これ、ひどいね。

しばらくして、だいぶ、落ち着いてきたので、いろんな話をしてみた。
隣りの家のメイドとなんて、ゆっくり、話すことなんて、ない。
でも、今、我が家のテラスで、泣きながら、足に、オロナインを塗っている娘は、充分に、可哀相である。

他愛もない、世間話をしているうちに、この娘って、一体、いくら、もらっているのかしら?と、考えた。
おそらく、一ヶ月、1200ペソから1500ペソだろうなぁ。
「ねぇ、給料、いくらもらっているの?」
と、聞くと、
「わからない・・・」と、答える。

この娘の母親が、しょっちゅう、隣りの家に、やってきては、お金を借りていくのだそうだ。
だから、自分の手元には、現金なんて、残らないし、自分の給料が、いくらかも、知らないんだって。
娘は、足が痛いので、半分、泣きながら、半分、笑いながら、そう、私に言った。

そういえば、隣りの家に、娘の母親らしい人が、訪ねてくるのを、見たことがある。
決まって、食事時に来て、一緒に、ご飯まで食べていく。
時には、小さい弟や、妹も連れてきて、一緒に、ガツガツ、ご飯を食べている。

悲惨じゃん・・・

「その薬は、アナタにあげるよ。一日に何度か、塗りなよ。それから、ゴム草履は、履いたほうがいいよ。」

翌日、いつものように、朝、早くから、働いている彼女に「足、大丈夫?」と、聞いてみた。
「うん。だいぶ、いいみたい。薬、ありがとう。」
と、笑顔で答えた。

こういう娘にこそ、本当に、幸せになってほしいと思う。
その辺の、仕事もないウリタオには、引っかかってほしくはないなぁ。