30年位前の話。
そこそこ綺麗な2階建てのアパート。
北側に3戸南側に3戸、計12戸のアパート。
月額40,000円というバブル時には、につかわない金額。
まぁ、地方都市ということで安かったのかもしれない。
2階の東側に居を構えた知り合い。
日差しもよく当たっていていい部屋だったそうだ。
引っ越しをして周りに挨拶を行ったらしい。
みんな良い人そうで良かったらしいが、隣の住人だけには挨拶ができていなかったらしい。
まぁ、長距離トラックのドライバーかなにかで、挨拶に行っても不在だったようだ。
深夜、知人が物を落としたらしく、音が響いたらしい。
すると、隣の壁をすごい勢いで叩くというよりドツク音が聞こえたらしい。
悪いと思い、朝引っ越しの挨拶を兼ねてお詫びに行ったらしいが、チャイムを鳴らしても音沙汰がないという状況。
『仕方ないか』と思い自宅に帰る。
他の住民さんには可愛がられて、オジサン、オバサン、お姉さんもいたようで、『これから学校?がんばってね』とか『行ってきます』と挨拶を行う日々だったようです。
ある日の深夜、友達が来て少し騒がしくなったとき、隣の部屋からまた壁を叩かれる行為が。
今回の場合叩かれるというより、壁に穴が開くんじゃないかというぐらいの音がしたそうだ。
ちょっと酷いなと思い、大家さんに相談しに行ったようである。
大家さんはアパートの隣に住んでいる。
住居も武家屋敷のような大きな家で、庭の掃除をしていたそうである。
『お世話になってます、206号室の○○ですが。』
大家さんが『ハイハイ、どうも』と挨拶を交わした。
『あの205号室の方なんですけど、夜少し音を出しただけで壁を殴られるんですよ、どういう方が住んでおられるんですか』と。
大家さんに尋ねたらしい。
大家さんのおばさんは少し怪訝そうに『大丈夫?』という声をかけたそうである。
『何がですか?』
『いやだって、今このアパートには、あなたしか住んでないのよ』
大家さんはようやく住人が出来たことで喜んでいたそうなんだが、知人は速攻で引っ越したそうだ。
あの挨拶した、オジサン、オバサン、お姉さんは何だったんだ?
物落とした時の壁のバンバン音は何だったの?
今になっては不思議な話と彼は言ってましたけど、聞いた僕は震えちゃった。