其の二・前回の続き [テーラーを目指す方、独立を目指す方もご笑覧下さい] | “Art de Vivre なお洋服を” 仕立屋日記

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注文紳士服の仕立屋と、スーツ仕立て品専門のクリーニング店を運営するセカンドハウス。

店舗情報やファッションの話しを中心に綴っております。

TAILOR & CLEANING SECOND HOUSE 【 秋葉原駅駅・昭和通り口 徒歩3分 TEL : 03-5829-4557 】

TAILOR & CLEANING SECOND HOUSE BLOG

 

 

 

こんにちは。

 

前回の投稿に様々な反響を賜り、読者の皆様には心より感謝申し上げます。

 

 

さて弊社はテーラー・ブライダル・クリーニングの3事業においてリテールとホールセールを展開しております。

 

最近は業界の先輩方より「職人が高齢で」と、ビスポークの下職案件ご相談が増えており非常に有難い限りです。

 

 

しかし、なぜこのような事態になっているのか長年考え続けております。

 

 

 

 

ご相談を頂くお店様に多いのが、当時のお仕立て価格から大きく変動しておらず、その結果下職工賃も比例した金額を求めざるを得ない事情があります。

 

 

私が小僧の頃に聞かされた言葉でいうと「1000着縫って一人前」という訓示がありました。

 

 

目指すところではありますが、現実はなかなかタフな話です…

 

 

2週間でスーツ上下1着を縫って年間26着、1000着には38年6ヵ月の道のり。

 

昔も今もそうですが、上記のペースでお客様の応対や型紙の作成・裁断・仮縫いなどを1人でこなすのは不可能です。

 

 

またワードローブの多様化に伴い需要と供給のバランスが変化した今、この着数に恵まれることは至難の道。

下職工賃も上がらない状態では、次世代が増える筈もありません。

 

 

いつの時代も所得を土返しし、夢を追いかける若者はいます。

 

しかしその熱意に乗じて、結果的に労働の搾取になっているならば、遅かれ早かれの話なのかもしれません。

 

 

 

また業界では「歯抜け世代」と呼ばれる問題も顕在化しています。

 

職業の選択肢が増え、新しい産業が台頭する時代背景の中、豆腐屋の息子が豆腐屋を継ぐのを迷うのと同じように、仕立屋の息子が仕立屋を継いでこなかった時代がありました。

 

例えばDCブランドブームやIT化など、若い世代が目新しい方向・選択肢に向かうのも致し方ありません。

 

 

 

 

その結果、技術の継承が途切れかかる懸念が生じております。私の師も70を過ぎており、世代の違いから生まれる価値観の差は技術を教わる際にある種の障壁にもなる恐れもあります。

 

 

今の時代は職人であってもマーケティングなどにも明るくないといけません。経済の発展は所要時間の圧縮とは上手く言ったもので、この点はいつの時代も変わらない真理なのだと感じております。

 

ツールが変わるだけで、やることは一緒なのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

さて我々テーラーの生態というと前回記載の通り、ご要望は生理的であり、お客様ごとの価値観やファッション・ライフスタイルを深く理解する必要があります。

 

またこの様な内容を同時に複数の方から伺うわけにもいかない為、ご予約制とするお店が多いのだと認識しております。

 

 

当店ですと内部に3名・外部に3名、計6名の職人に加え、見習いのスタッフが在籍しております。

 

 

 

 

日本のビスポーク工房を俯瞰して考え、規模を小〜大を5段階に分類した場合、恐らく当店は2か3といった規模だと思います。

 

 

決して大きな工房ではありませんし、製造業として考えれば零細企業。それだけ限られた業界規模なのだと感じます。

 

資本を活用した上段構えとは中々いかず、借入で資金調達しても、デットはどこまでいってもデットです。

 

また人材に対する投資はデットとの相性が良いとは言えません。

 

 

エクイティにも様々方法はありますが、方法によってはイニシアティブを失いかねないわけで、悩ましいところ。

 

妙案はないかと思案した結果、コアコンピタンスを見つめ直すことと、選択と集中なのではと考えております。

 

 

あとは、その切り口です。

面の作り方は、お店ごとのスタンス。

 

 

 

 

おぼろげではありますがテーラーやクリーニング、その先について初めて事業計画を立てたのが26の時。

 

雑誌を切り抜き、店舗イメージを膨らませたりと、今となっては良い思い出です。

 

 

 

弊社の企業理念は「テーラーの門戸を民主化する」を掲げております。

 

 

予約制かつ、仕上がらないと製品を体験出来ないサービスはハードルが高く感じるはずです。

 

しかし上記理由から予約制の構えを解除するのは本質的ではなく、解除するにしても床面積やスタッフの人数の増加、はたまた応対の時間を短縮するか…

 

 

私はどれも好きではないです。

全て生態と反目しているように感じます。

 

 

だからこそご来店頂くキッカケや理由を多面化することで、門戸のみを民主化したいと考えております。

 

 

それがクリーニングやブライダルの事業が担う役割です。

 

どれもがテーラーと同じく生理的なニーズでもありますので、非常にやり甲斐を感じております。

 

 

 

 

もしかしたらテーラーとは無縁の方でも、これらサービスを通じて技術やスタンスを体験頂き、今後の選択肢の1つとして頂ければこの上なく幸せです。

 

 

副次的にはLTVが高まり、末長くお付き合い頂けるのかもしれません。

 

また見習い人工のダブつき解消や、社内ダイバシティに繋げる狙いもあります。

やはり職業の選択は自由でなくてはなりませんが、道を変更することと転職がイコールである必要はないはずです。

 

 

技術を受け継いだ身として、これから先も持続出来る業態を目指す次第です。

 

ひいては先代・先輩方へ恩返しになることを願っております。

 

 

 

 

最後に、よもやま話なのですが

 

業界として出来ることと言うか、私がこんな受け皿があったら良かったなと思うことを少し触れて終わりにします。

 

例えば、法曹界の『司法修習』の制度が参考にならないかと考えております。

 

 

一次的にでも血税を使う必要があるのかどうか疑義は残りますが、協会(又は組合)に加盟するテーラー店や縫製工場・付属などの資材業界にも研修出来る制度があったら良かったなと思うことがあります。

 

 

メリットは3つ

 

① 育成コストの按分と適性の底上げ

② テーラーの屋号と技術を協会が一定担保し、市場での認知向上

③ 業界で技術継承を促進し、職業の選択肢を広く提示

 

 

懸念

 

・ 組織化(協会)に伴いヒエラルキーの発生

・ 加盟金の透明性

 

 

 

こんなところでしょうか。

協会の公益性を担保出来るならば、独立する人間の技術を協会で認定することで、デットやエクイティに対しレバレッジを担う団体としても期待が持てます。

 

 

または神保町の古本屋街などを参考に、テーラー店のドミナントとその促進も手法かもしれません。

 

 

 

 

行政と連携すれば景観保存になるかもしれませんし、ある種の和製サビルローと位置づけても面白いかもしれません。

 

まぁ業界の方々が群れるのを好むようにも思えませんし、形骸化はもっと嫌ですが…

 

 

しかし、やれることはまだあると感じております。

引き続き精進して参ります。

 

 

 

今回はこれから注文紳士服の職人を目指す方、独立を目指す方にも参考として頂けるよう僭越ながら努めた次第です。

 

 

引き続き当店ブログ・SNSをご笑覧頂けますよう、宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

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