注文紳士服・仕立屋の行く末は | “Art de Vivre なお洋服を” 仕立屋日記

“Art de Vivre なお洋服を” 仕立屋日記

注文紳士服の仕立屋と、スーツ仕立て品専門のクリーニング店を運営するセカンドハウス。

店舗情報やファッションの話しを中心に綴っております。

TAILOR & CLEANING SECOND HOUSE 【 秋葉原駅駅・昭和通り口 徒歩3分 TEL : 03-5829-4557 】

 
TAILOR & CLEANING SECOND HOUSE BLOG
 
 
 
これから綴る記事は、いつかは発信したいと考えていたこと。
 
これも気分でありますが、ふと今が頃合いと感じた次第であり、あっさりと書けるか、長文になるか。
 
挑戦にお付き合い頂けますと幸甚です。
 
 

 
 
 
先日より断片的に進捗を@cleaning.secondhouse アカウントのInstagramに投稿しているクリーニング&お直しのご依頼。
 
まずはこれを題材に表題へ迫ろうと思います。
 
 
 

 
 
このご注文は叔父上様より受け継いだ思い出の1着をリサイズして蘇らせる案件。
 
私たちで言う、裁ち直し(全バラシ)と呼ぶご依頼です。
 
 
 
申し遅れました。
 
私、TAILOR & CLEANING SECOND HOUSE を運営致します、株式会社アトリエ高橋・中野の代表取締役の中野俊と申します。
 
18より紳士服に携わり1代目として独立、現在20年目の洋裁師を務めております。
 
本年6月に技術の師より法人屋号を賜り、代を継ぐ運びとなりました。
 
 
 

  
 
さて本題。
 
お直しとは中々、金額が読めないとお思いの方が多いのではないでしょうか。
 
私たちとて決して、指を舐めて風向きで算出している訳ではございません。
 
 
そもそもTAILOR(テーラー)をオーダースーツ屋とご認識なられている方も多いのでは。
 
 
 
それならば百貨店やセレクトショップ、はたまた量販のオーダースーツ店でオーダーを購入するのと差違は何だと言う話になってしまいます。
 
私はTAILORの和訳に1番近いのが注文紳士服の仕立屋だと考えており、私たちの本分は製造業です。
 
我々を販売のみ行う小売業とは括れないと感じております。
 
またスーツだけ取り扱いしている訳ではなく、ご要望次第ではありますがドレスクロージングを主体とした紳士・婦人のお仕立てを承っております。
 
故にお直しも得意とします。
 
 
そして、経験則から以下の様にも感じております。
 
既製品やオーダースーツ店でもご自身のお身体に合う洋服が見つからないと、駆け込み寺のごとくテーラー店にいらしたとしましょう。
 
いわゆる洋服難民です。
 
 
そんなお困りの方、ご要望に私たちが白旗を振ったら一体誰が社会の最後の防波堤になるのか…
 
だからこそ、ファッション語る前に技術磨けなのだと考えております。
 
 
 

 
お察しの早い方はお気付きかもしれません。
 
お直しの金額は工数と人工単価によって算出される、まさに製造業であります。
 
 
ここでお考え頂きたいのが、参考業種です。
私たちはどんな職業と同類の考え方が出来るのでしょうか。
 
 
私は美容師や理容師さんだと感じております。
これら事業を一般論化した利益率はネットで検索頂ければ沢山の事例がございます。
 
 
では現状私たちの業界はと言うと、そうはなりません。
 
私や当店副代表は小僧を経て現在がある訳でして、異業種の同世代を横目に歯を食いしばり下積みを過ごした自負があります。
 
 
ご紹介の案件でいきますと、老練の職人でも丸2日程度の作業時間になります。
 
 
【 before 】
 

 
 
仮にお時給が1,500円だった場合、8時間労働で人件費は24,000円(作業16時間)です。
 
弊社は夏季と年末年始の休暇がある為、月間労働日数の平均21.42日。お給金は月収概算で257,040円になります。
 
しかし丸2日の作業時間は老練の職人が前提。
まずもってこのお直しが出来ないか、もっと時間がかかるのは必至です。
 
 

幸せの定義にもよりますが、家族を養ったり自宅を購入する選択肢を考えると、月収40万円は目指したいのが世の本音と感じております。
 
業績連動のボーナスなど、月の人件費を圧縮する方法は数多ありますが、上記を単純計算し時給換算すると2,334円。
 
本件製作における人件費(原価の一部)は37,344円となります。
 
 
 
お直しの予算感というと、購入金額の10〜20%を目安としてお考えになる方が多く感じます。
 
人の判断は相対的であり、100均に行って安いと感じるのは無意識でも何かと比べているからこその感覚。よって購入金額を嫌でも意識してしまうのです。
 
 
しかし、私たちの技術がお持ちになられるお客様の購入金額に応じて変動する訳ではないのが悩ましいところです。
 
 
ご予算があるのも事実ですから、こういう時はご来店のうえ、率直にご予算をお伝え頂けると有難い限りです。
 
 
ご依頼品と着姿を拝見し、ご予算に応じた内容と必要あれば更に良くなる方法など、相対的な判断がしやすいよう理由を添えてご提案に努めさせて頂きます。
 
 
 
 
 
 
さて上記とは別にコストはまだございます。
 
接客応対や機材など設備投資の回収もコストとして無視出来ません。そして当店が何より拘っているのが未来への投資です。
 
 
それは見習いスタッフのこと。
少し前の出来事。法人成りにあたり社労士さんと人事制度の打ち合わせをしていた時のことです。
 
 
見習いの皆さんの給与処遇についてなのですが、学校と職場が同一化している訳なので、東京都が定める最低時給を守るか守らないかの話に。
 
 
私や副代表はそんなものに守られたことは1度もなく、それでも親方には感謝の念が絶えないのが本音でありますが、、
 
 
鼻っ面に人参の代わり、夢をぶら下げて42.195㎞かどうかも分からない道のりを走ったのも事実。
 
 
しかし、20年前とは時代も物価も生活スタイルも違います。過去を美化して良い理由など何もないのです。
 
 
体罰が当たり前だったにせよ、して良い理由にならないのと同じだと考えております。
 
 
正直、見習いなど戦力になりません。
辞めるかもしれません。
 
 
青臭いかもしれませんが、それも私たち次第です。
真摯に向き合えばついて来てくれると信じており、それで辞めるならば仕方ありません。
 
職業の選択は自由であり、私たちに限った話ではありませんので。
 
 
これらコストを上乗せし、すべき企業努力は実施し、マーケットプライスを鑑みながらお直しやお仕立てメニューの上代を設定しております。
 
 
こうして台所を曝け出しているのも、ちゃんとご理解を頂く努力をしなくてはならないと強く思っていたからです。
 
認知の前に露出。
 
 
私たちTAILORの生態についてご理解を賜り、お客様と一緒にファッションを楽しみたいと願っております。
 
もちろんサイジングについては我々が責任を持ちます。小難しい洋裁理論について語っても、そうなんですね。としかお客様は言いようがない筈。
 
はたまた「お似合いですよ」の言葉では着心地は良くならない訳で、ファッションでは解決出来ないことがあるのも事実。
 
 
だから注文紳士服は面白いと感じる次第です。
 
 
 
【 after 】
 

 
 
2枚目の写真の通り今回は大幅なサイズダウンとS字屈身を目指す裁ち直しです。本来ならば重力に従い生地は真下に落ちるので、背中下の腰辺りの生地が余り、お腹に向けて引っ張られるシワが現象として生じます。
 
輪切りの寸法が決して太い訳ではないのですが、既製品やパターンオーダーだと必要以上にゆとりが必要になる体型とも言えます。
 
もしくはシワが顕著なジャケットを着るか…
 
 
重力とは、月が地球の周りを回る衛星として引きつけるほど強い力です。
 
よって着心地の根源は重力であり、これに反発させることを立体と呼びます。
 
 
日本ではテーラーの屋号を掲げることに法律の規制はありませんが、決して軽い看板でないと痛感する次第です。
 
 
 
 
 

 
 
今回は水洗いクリーニングと併せて一新し、再度ご愛用頂けるよう努めさせて頂きました。
 
 
製作過程にご興味ある方は、ぜひ AQUA CLEANING SECOND HOUSE インスタグラムをご覧下さい。
 
 
 

 
 
 
 
あとがき
 
 
添削・査読を何度も繰り返しましたが、長文になってしまいました。
 
ここまでお付き合い下さり、心より感謝申し上げます。
 
 
この様な投稿には賛否ご意見あるやもしれませんが、これから先も持続する職業として声を挙げるべきと考えております。
 
 
弊社の企業理念は「テーラーの門戸を民主化する」です。それが先代先人への恩返しだと胸に誓っております。
 
 
次回は弊社が何をゴールに目指すお店かもう少し綴りたいと思います。
 
なぜ、テーラーとクリーニングなのか。
私たちはもっと沢山の仲間を必要としています。
 
 
 
以下は私が親方より頂いた言葉です。
 
 
" 伝統と継承を履き違えるな "
 
継承とは満額だ。時代が変われども、技術は裏切らない。
 
しかし、君と僕が生きる時代が違うように、今の時代に即したテーラーであれ。
 
伝統を守りたいなら、革新の連続だ。
 
 
 
 
私たちが目指す道がこれに該当するか分かりませんが、信じて進むまでです。
 
 
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
 
 
 
 

 
 
 

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