太極拳の修行方法の心得 (3) | 健康・護身のために太極拳を始めよう

健康・護身のために太極拳を始めよう

太極拳は、リラックスによるストレス解消、血行改善、膝・腰強化、病気予防などの健康促進効果以外に、小さな力で大きな力に勝つような護身効果もある。ここでは、中国の伝統太極拳の一種である呉式太極拳の誕生、発展およびその式(慢拳・快拳・剣・推手)を紹介する。


◎太極拳の呼吸

修行における「以心行気」の「気」は「真気」のことであり、呼吸と混同してはいけない(《太極拳の究極の練習目的への思索(3)》をご参照下さい)。 太極拳の動作も呼吸に合わす意識で練習すべきではない。 あくまでも自然呼吸だ。さもなければ、得るものが手に入らないどころか、健康に弊害を来たす。「気」は結果であり、正しい「心」・「意」の持ち方がなければ、「気」の結果も生まれてこない。 武禹襄氏が《十三勢行功心解》で指摘した「全身意在精神,不在気,在気則滞‥」 (「全身の意は精神にあり気にあらず気にあっては停滞するのだ」の意)の言葉を十分吟味すべきだ。

太極拳の呼吸は逆複式呼吸とされている。ところが、これも結果論だ。動作に当たって 今は逆複式呼吸の「吸」で腹部をへこますべきだとか 「呼」で腹部を膨らますべきだとか意識すべきではない。意識するほど息苦しくなるだけで真の逆複式呼吸にはならないのだ。

太極拳の要領を示す古典の教示は、結果を指すか直接の手段を指すかを見分ける必要があるのだ。「気沈丹田」も、ある意味で結果論なのだ。


◎「意」の中味
 「意」の中味は「心法」とも言い 修行者の段階によって異なる。(1)で述べたように套路の順番を思い出しながら太極拳を行うのが、「意」を使う最初の一歩だ。順番を体で覚えた段階になると、姿勢の各要求に「意」が移り 次第に中味を濃くしていく。 更なる段階においては 「着法」と呼ばれる各動作の武術的意味、即ち使い方に「意」を使ったり、動きの虚と実、開と合に「意」を使ったりして、様々なアプローチのノウハウがあり、目に見えない太極拳の内功を左右するほど肝心なのだ。


◎太極拳の目線

   目線は手を追うというのが一般的だが、どのように追うかについてはあまり問題視されていないようだ。 実際、太極拳の動作は人体力学的に合理化されており、顔の向きも動作によって決まり 人体力学的に外れることはないのだ。即ち 手を追う目は顔の向きに制約されており、正視できる場合とできない場合があり、すべて正視で手を追うことができるわけではないのだ。かと言って、手は手、目は目というような修行方法もだめだ。目は「心の窓」とも言われ、柔の中に剛があり剛の中に柔がある太極拳の目線は 剛と柔のミックスなのだ。目に陰と陽、開と合が現れるようになると、上級者レベルと言えよう。