事務所を出、駅でH氏と別れた私は、かつての部下Mと共に馴染みだった店に行く事にした。
店に入り、かつての指定席だった喫煙席のソファに座り、店員さんにビールを注文する。
店員さんの顔ぶれはすっかり変わってしまっていた。
少しして運ばれてきたビールを呑みながらMと談笑していると、いきなり声を掛けられた。
『あの…お久しぶり、ですよね…?』
顔を向けると、かつて3日と空けず通っていた頃に顔見知りになった店員さんだった。
『お久しぶりです。覚えていて下さったんですね』
『ここしばらくお見えにならなかったので、どうされたのかと思っていたんですよ』
『東京の本社に異動になったもので。こちらに顔を出すのは2年振りくらいになりますか』
『そうだったんですか…残念ですね。また機会があったら、いつでもいらして下さい。お待ちしております』
毎日多くの客と接する店員さんが、かつての常連とはいえ、名も知らぬ酔っ払いの顔を覚えていてくれた事が嬉しかった。
Mとの話にひとしきり花を咲かせ、会計を済ませて店を出ようとしたら、下げものをしている店員さんと目が合った。
笑顔で会釈をし、店外に通じる階段を降りながら、次は無理矢理にでも機会を作って顔を出そうと心に誓う変態オヤジであった。