鬼達は一斉におおー! と声がそろう。
「なるほどな、その手があったわ! お主はそれで良いのか?」
羅門は鴨生に確認する。
「あ~~特にオレはないので良いですよ。
なので男の子…カケル君達家族がみんな幸せになれるように願いたいです」
鴨生は本当に欲がなかった。
「よおし! あい判った、その願いを叶えよう!」
と羅門。
「わ~~! すげえ、それでいいだー! 何か羅門さん、節分の鬼というよりはサンタクロースみたいだね」
思わず鴨生は口にしていた。
すると、
「サンタクロース……たわけたことを言うでない」
あれ? 羅門さん、照れてる?
横を向いて咳払いをしていた。
「……とはいえ、鴨生の願いはわりと儚(ハカナ)く永遠のものではない。
これからお主達には良いことが次々と舞い込むことになるが、それらのことをないがしろにしないことだ。
それなりに受け入れて、そしてひとりひとり万全を尽くす。
例えば、父親は仕事に逃げず他のことにも逃げずしっかり家に帰ってそれなりに、この子らの面倒を見ること。
助けがあるからといって母親のすべきことを放棄しないこと。
それさえ守れば、良い未来がやってくることだろう。
逆に家族のことをおこたった場合は……反動で悪いことが必ず主らに返ってくるからな。
ガッカリさせるでないぞ」
カケルの父親と母親は少し複雑な顔をした。
が、
「わ~~ありがとう、鬼さん、また来てね」
カケルは一気に笑顔になると、羅門の足にしがみついてきた。
「それは出来ないかもしれんな……」と羅門。
「え、どうして!?」とカケル。
「それはオレ達が鬼だからな、だから、ちゃんと追い出さないとならんだろう? そうしないと真の福は来ぬぞ」
「やだ、やだ、やだ~~! 追い出したくな~~い! また来てよ~~! 鬼さん達~~!
一緒に遊んでくれたし、うちの中をキレイにしてくれたし、お父さん、お母さんのことまでいろいろしてくれたのに! やだよ~~!」
カケルの言葉に、つい羅門は目がうるみ……
「ダメだ! 今日は節分だろう? そういう日だ、やるのだ、カケル! やれっ!」
羅門は声を荒げる。
途端、カケルの父親が豆を買ってきたので、袋を開けて豆をカケルに分けると、
「鬼は外~~福は内~~」
カケルの父親が先陣をきって豆を投げた。
そして、次にハッとした母親が続いて豆を投げる。
両親の姿を見てカケルもとうとう、
「鬼は外~~福は内~~鬼は外~~福は内~~鬼は外~~福は内~~……」
最初はためらっていたが、どんどん声が大きくなっていった。
黄邪鬼はベッドに赤ちゃんを戻すと、急いで他の鬼達と一緒に外へ逃げていく。
「あ、お邪魔しました」
鴨生は一礼すると鬼達の後を追って、外へ出た。
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