苦情承ります〈35〉主婦業ボイコットと李々佳からの報告 | いろいろしぃーのブログ

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その夕方はさすがの天乃も主婦業をボイコットして、寝室でふて寝する事態だった。


「夕飯は何にするの?」


夫の問いに答えない天乃。


「お風呂、水抜いてないし洗っていないじゃないか」


更なる夫の言葉にも無反応。


「洗濯物は~~!?」


取り込んでいないので夫がせっせと取り込む。


「ママ~~見て~これ~~」


娘の反応もスルー。


夫と娘は少し話し合ってふたりでやってきて、


「ごめんなさい」


と謝る。


「謝ればいろいろ今まで通りやってくれると思ったら、大間違いだからっ!」


ふたりに対して背を向けた。


「本当に悪かったよ、勝手に話しちゃって……」


夫が言うと、


「ママ、機嫌直して……」と娘。


「もうちょっといろいろ考えたいから、ひとりにさせてくれる?」


天乃がそう言うと、ふたりはあっさりひいて寝室から出ていった。


「あ~~もう、逃げたいな~~どこかに……」


その時、


「あ、こんな時にあのグチつぼか苦情袋を……」


ふと頭をよぎった。


その時、タイミング良く矢張李々佳(ヤハリ イイカ)から着信がある。


お決まりの空徐伊湾の報告だろう。


『……今度、空徐君、お母さんと競馬を見に行くんだって……』


李々佳は悲しむ感じではなく、伊湾に言われたままきっと淡々と言っていた。


「は?」


『お母さんと競馬を見に行くんだって』


律儀に繰り返す李々佳。


「それは判ったけど、何でお母さんと競馬に行くわけ? あんたはどうして誘われないの?」


天乃は何か伊湾とその母親の関係が気になりだす。


『ああー、そっかー、そうだねー、でもだって今回は空徐君のお母さんから言い出したらしいから……』


「ええ、競馬に行きたいって?」


『そう、何でも1度でいいから近くで見てみたいとかで……』


「であっさりふたりきりで競馬へ行くんだ?」


『そうみたい……』


「私も行きたいとか言った?」


『言わない……だって、興味ないもん』


興味ないもんって、そういえばこいつら遠出したことがなかった。


「はあ~~」


天乃は頭が痛かった。


こいつらのことも、自分の家庭のことも両方……



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