ある日のホームルーム
先生がみんなに声がけをした
君たちの下駄箱がある玄関に
メダカの水槽があるのを知ってる人〜
そう言いながら 先生はみんなを見渡し
自分の手を上げた
は〜い は〜い と
あちこちから手が上がった
もちろん 少年も手を上げた
そのメダカの 世話をしてくれる係を
決めたいと思います
誰かやりたい人 手を上げて下さ〜い
最初は ざわざわと ひそひそが 聞こえて
だんだんと 静かになっていった
そんな時 テツヤ君が手を上げた
はい
おっ やってくれるのか ありがとう
さて ふたりでやって欲しいんだけど
もうひとり いるかなぁ
ほんの一瞬 シーンとしたあと
少年が手を上げた
はい
ざわざわと ひそひそが 大きくなった
おう もうひとり手が上がったぞ
そうか やってくれるか ありがとう
先生は少年を見て にこにこしている
そして 机に両手をつき 体を前に出して
みんなに 確かめました
このふたりにお願いしていいですか〜
いいで〜す
元気な声のかたまりが 教室に膨らんだ
生徒玄関に たくさん並ぶ下駄箱
その端っこ 玄関の隅に 水槽はあった
先生は ふたりに話しかけた
実はねえ 隣のクラスの前の係が
夏休みの間も 世話をしてくれたんだけど
メダカの数が減っちゃったんだ
先生が話し続けているけれど
少年は 何かが気になって
玄関の外 脇の草むらを見た
そして 見つけた
いた
よっ
こんにちは
なんだよ 驚いてくれよ
ふふ じゃあ びっくりした
じゃあってなんだよ
ここまでくるの 結構。。ま いっか
その時 先生が ふたりの肩に手を置いた
それじゃ これからよろしくね
はい はい ふたりは返事をした
先生が立ち去って ふたりだけになった
テツヤ君が 話しかけて来た
これから よろしくね
うん よろしくね
挨拶も終わり ふたりで 前に屈んで
水槽の中のメダカを しばらく見ていた
ふと気付くと テツヤ君が
外の草むらの方を見ていた
視線の先には モグラが見えている
もしかして。。
見えるの?
あれ モグラかな。。
そっか 君にも見えるんだね
他の子供たちも たくさん遊んでいる
でも モグラに気づいている子供はいない
少年は 胸が高鳴った
そして 涙が出そうになるのを
グッとこらえた
サングラスをかけたまま
きょとんとしながら
モグラは 少年を見つめていた