真っ青な空に いくつかの雲が浮かび
太陽は 強烈な光を注いでいる
遠くの空には 高い高い入道雲

夏休みが終わって
教室には熱気があふれている

みんなそれぞれ 何人かで集まって
楽しかった冒険や 旅行に行った話など
わいわい がやがや そわそわ きらきら

窓際の自分の席に座った少年は
窓から吹き込む風を感じながら
教室のざわめきを眺めていた

ひとりで座っていたのに 寂しくなかった
みんなと違うのに 辛くはなかった
おじいさんの家で モグラに出会って
大切な『誰かひとり』の話を聞いたから

今はもう 背中を丸めて教科書を見たり
こっそりと 周りの様子を伺うこともない
クラスメートの姿が くっきりと見えている

さーっと風が膨らんで 少年を包み込んだ

ふと 誰かを感じた え? 窓の外?
少年は教室に漂わせていた視線を
ゆっくりと 窓の外に向けた
サングラスをかけたモグラがいる

嘘でしょ。。

ちっ! 嘘ってなんだよ
オレは 嘘をつかない まじめなモグラだぜ
せめて 幻って言えよ

だって。。なんで 学校に

ふふ 凄いだろ これがモグラだ
土の中ならどこまでも それがモグラだ

いや あの そうじゃなくて
何のために学校に? 僕に会いに?

あ そっちか。。
あのなぁ 話せば長いんだよな

少年は 続きを待った

奥さんに お前のことを話したんだよ
そしたらさぁ。。

そうしたら?

言いたいことだけ言って 終わっちゃダメ!
ちゃんと見届けてあげて!って
あなた モグラでしょ!って
だからよぉ こうしてさぁ。。

少年は 小さく吹き出した
奥さんに言われて 悪いなぁと思って
恥ずかしそうに こうして来てくれる
ありがたく 可愛らしいと思った

少年は 笑顔になった

ありがとう

モグラは 視線をそらして

おう 気にすんな 何でもないことだ

そして 少年の方を見て

頑張れそうだな

うん 大丈夫 分かるの?

目を見りゃ分かる いい感じだ

また会える?

どうかな。。
近いうちに いつかまた。。かな

分かった
奥さんにも ありがとうって伝えてね

モグラは 少年の目をまっすぐ見た

ああ 分かった 伝える

モグラは一息ついた

それじゃあ 行くとするか

サングラスをおでこに上げた
くるりと背中を向けて 片手を上げた

あばよ

少年は モグラが土に潜って行くのを
嬉しそうに見ていた そして。。
気配を感じなくなって 青空を見上げた
青空はこれでもかと青く
真っ白な入道雲が空のきわに浮かぶ
力強い夏の空だった

少年は モグラが現れた地面を見た
やはり 土はモコモコと盛り上がってない
顔を出した穴も 見当たらない

今のも夢? と、思いながら
夢でも構わないとも感じていた
少年は 椅子から立ち上がった
そして 空を見上げて
両手を開いて う〜んと大きく伸びをした

さあ 学校生活が 新しい僕が始まった