先週末の三連休で、函館を訪れた。妻と娘と連れ立っての三人旅は久しぶりだ。娘は土日祝でも救急の当番があったり、夜でも待機の日が多くあるなど、なかなか自由な時間を過ごせない。そんな中、この三連休はポッカリ空いているからどこかに行こうと、妻と僕を誘ってくれたのだった。

 函館へはもう10回ほど行っている。青函トンネルを行き来する普通列車での旅は安価で、片道3時間で3000円位だった様な記憶がある。しかしその後、北海道新幹線が開通すると普通列車は廃止され、交通手段は新幹線のみとなり、金額も8000円前後になり、心無しか函館が遠くなった。

 今回はフェリーで渡航した。車なしの3人で片道7500円ほど。3時間40分かかるが、揺れも少なく快適な旅だった。

 観光客に人気の赤煉瓦倉庫群のショップや、坂の上の街並みが瀟洒な元町などを散策した。いつものコースとはいえ、外国情緒が感じられるレトロな家並みや教会の数々はやはり独特で、今回も旅行気分を十分に味合わせてくれた。


 久しぶりに訪れたカフェがある。20代の時分に妻と訪れた蔵を改装したカフェがふと妻の脳裏に浮かび、僕がネットで確認をしてみると現在も営業していた。市電に乗り宝来町で降りてすぐ、坂の上り際にある『茶房ひし伊』である。

 店内は外光を取り入れているため薄暗さは感じない。厨房カウンターの上は吹き抜けになっていて、一部2階がある。若い時分に訪れた折りは、その2階の畳敷きの席で時を過ごした。おしゃれな店内では、周りに居る客達の落ち着いた来慣れ雰囲気とは異なり、若い自分がひとり浮いた存在になっている様に思えたことを覚えている。今回は緊張もなく、何のてらいもなく過ごせているのが不思議に思えた。

 紐解くとこうだろう。背伸びをしてオシャレに気を遣っている若者は、未だ自分に自信が持てないし、着ている物、身に付けているものと調和が取れてしっくりきているかどうか不安で仕方がない。本当のところ周りからどう見えているか、言いようの無い不安を常に纏(まと)っている様なものだ。

 しかし、年齢を重ねると分かることがある。来ている物や身に付けている物だけで人は評価されない。周りから自分のファッションがどう見られているかなどはほぼほぼ気にならない。だからこそ自然体で周りに溶け込み、その場所を楽しむことが出来るのだろう。


 旅は楽しい。旅に出る時のファッションも楽しみだ。デニムのロングジャケットに帽子を被り、首元には薄手の赤いマフラーを後ろで結ぶ。そして手首には皮のブレスレット。顎に蓄えた白い髭もしっくり来ている。


 緊張しては何にもならない。


 自然体で、また旅に出かけたいものだ。