アイドルに、歌手に、役者に、アナウンサーに競争馬。人それぞれに生活する上でのメリハリとも言える大好きな人、ものがある。グッズを集め、登場する場面があればコンサート会場でも競馬場でも駆けつける。正に生き生きとした生活を彩ってくれる存在だ。


 僕は小学校の中頃から中学校まで、切手を収集した。当時は市内に切手ショップもあり、狭い店内の中にはいつも人が溢れていた。しかし、お小遣いではそんなに集められる訳でもなく、次第に熱が冷めていき、最後には切手ショップで売って、切手収集生活は終わった。


 高校生になると喫茶店に出入りする様になる。大人びた雰囲気の中で飲むコーヒーの味は苦く、最初はミルクと砂糖を入れなければ飲めなかった。

 そんな中、喫茶店のマッチを集めることが楽しくなって行く。僕だけでなく、友達も集めていた。店ごとにデザインが異なるマッチだが、ほとんどは箱型で、筒形の外箱と中の受け箱をスライドさせマッチを取り出す。そして、外箱の側面に貼り付けてあるヤスリに擦り付けて火を点ける。

 次第に増えて行ったのが、箱状ではなく外紙を折りたたむタイプのもので、マッチは底部にくっつけてある。ちぎる様にマッチを切り離し、内側下部のヤスリに擦り付ける。

 時代が進むと、マッチの根本がくっついて薄い板状になっているものに出会う。これは衝撃だった。後に、板状のマッチを上下2段に重ねてあるものも登場した。

 喫茶店のみならず、食堂だったりレストランだったり、様々なお店のマッチを集めた。その数は100個ほどだったろうか。自分の部屋の長押(なげし)の上に並べて飾った。

 しかし、高校生が無尽蔵にお店のマッチを集める事は難しく、次第に新しいマッチに出会えなくなり、熱は冷め、やがてタバコに火をつけるために使い始め、最後には庭で一本一本に火をつけて燃やして終わった。


 懐かしい青春の一コマである。