NHKで、『母の待つ里』というドラマが放送されている。中井貴一さん、松嶋菜々子さん、佐々木蔵之介さんをメインキャストとして、それぞれの背景と体験を交錯する様に描いてゆく。昨年BSで放送したものを今回は地上波で放送していて、第一話と第二話が放送済みで、第三話と最終話が9月20日に放送される。
浅田次郎氏の原作によるこのドラマは、一話ごとに登場人物が代わって行くオムニバスとは違う手法をとっているために、それぞれの登場人物ごとに全く違う話になる様な感覚はなく、連続性を持って観ることができる。
舞台は岩手県遠野市。柳田国男氏が編纂した『遠野物語』のど真ん中の風景が描かれている様で、時代を錯覚したまま物語に引き込まれる。市街地から離れた山裾の集落に南部曲がり屋。粘りつく様な優しい方言。そして、宮本信子さんが演じる『お母さん』。全ての人、ものが、ゆっくり過ぎるほどの時間の流れに乗って、訪れた人の心に触れて溶け込んでゆく。
田舎での生活は、地方都市である青森市で生まれ育った僕ほどの年齢の人間でも体験したことがない未知の世界だ。そんな、日常生活とは程遠い環境での生活は、虚構の体験でありながらもそれぞれの登場人物に影響を及ぼして行く。
僕は、昨年のBSでの放送を録画したものの、例によって、気になる番組ゆえにもったいなくて今まで観ていなかった。だから、第三話と最終話はまだ観ていない。
第一話の冒頭から不思議な世界観に放り込まれた僕の心が、どこに、どんな風に落ち着くのか楽しみだ。