暑さは峠を過ぎかかっている様に見える。青森市では30℃越えと29℃、28℃の間を行ったり来たりしている。最低気温は20℃程で、夕方からはエアコンを切っても大丈夫になってきているのも嬉しい。
夏が過ぎれば、北の方から徐々に秋の便りが届く。その最たるものが紅葉で、青森県だと、八甲田山系、十和田湖、奥入瀬渓流、蔦沼、弘前公園、薬研渓流と名所の枚挙にいとまがない。
中でも、黒石市にある中野もみじ山はもみじの名所として名高い。その他の殆どが手付かずの自然の景観なのに対し、ここだけは意図してもみじが植えられた。弘前藩主である津軽寧親公が京都から苗木を取り寄せて植えさせたものである。湾曲する渓流を取り囲む様にして植えられたもみじが色付くと、圧巻の美しさである。夜間にはライトアップされて、多くの観光客で賑わう。
同じ様に自然の景観ではない美しさで有名な場所が京都にもある。
そもそも寺社仏閣の庭は何某かの木々が意図して植えられてその美しさが感動を呼ぶ。しかし、開闢(かいびゃく)後にその姿を変えていく事も稀ではない。
東福寺はもみじの名所として広く知られ、紅葉のもみじのみならず、雨に打たれた青もみじも好きな方が多いと聞く。月を窺う偃月橋、人々が天を仰ぐ天通橋、そして天に昇り雲と同じく空に遊ぶ臥雲橋を歩きながら絶景を眺めるのはこの上ない喜びである。
当初、東福寺には沢山の桜が植えられていた。しかし、時の足利将軍から褒美を賜る段になり、禅の修行の妨げになるとの理由から、それらの桜の木を全て伐採して紅葉に植え替えてもらったのだ。
爾来、もみじは寺の園地を埋め尽くす程になる。禅寺といえども、時代の流れと共に一般公開は徐々に進んでゆく。その美しさが次第に世に知れ渡る様になり、訪れる人々の心を躍らせ、華やかに彩り、癒し鎮めるのである。
物事に対して人々がああだこうだと言っても何も変わらない。
桜であれもみじであれ、生きとし生けるもの全てが、生来の美しさと生命力を持ち合わせているのだから。