秋の虫が鳴いている

かすかに 遠慮がちに

チリチリチリと 可愛らしく

キュリキュリと しっかりと

そして コゥロコゥロと 図体が大き目な声


風は窓をすり抜け 柔らかく吹き込む

まだ掛けている風鈴の音が小さくきらめく


夏と秋がゆっくりと馴染む夜

長過ぎた暑さのあと

ようやく訪れた夜の涼やかさ


楽しく話をしていれば

気付かなそうな虫たちの声

テレビにはしゃいでいれば

虫たちの声を知らぬ間に遠ざける


いけない いけない もう一度 もうひと時

虫たちの声に 耳を澄ませよう

暑さと涼しさの狭間で恋の相手を探して

一生懸命に語りかけているのだから

そんな情熱の声に 耳を澄ませよう

そっと そっと


僕にも あの子にも そして貴方にも

そういう切ない時があった事を

少しだけ照れ臭く 思い出しながら