NHKのBS放送で、毎週日曜日に『照子と瑠衣』というドラマが放送されている。間もなく番組も佳境を迎える。風吹ジュンさん演じる大人しい照子と、夏木マリさん演じる奔放な瑠衣との一時の物語である。

 その中で、ぐっさんこと山口智充さんが演じるカレーハウスのご主人の店で、越路吹雪の『愛の讃歌』を熱唱する。ピアノとウッドベースだけで綴られるシャンソンに心が震えた。


 あなたと二人で暮らせるものなら

 何にもいらない 何にもいらない


 エディット・ピアフの原曲を越路吹雪が和訳で歌ったこの曲は、彼女の代表曲であり、知らない人、聞いたことのない人は日本中の老若男女で一人もいないと言ってもいいくらいの名曲だ。

 その曲を夏木マリさんが歌った。元々は歌謡界に席を置いて活躍していたが、独特な風貌と肝の据わった声を持つ彼女は、役者としても成功を収めている。

 しかし、彼女は歌手なのである。シャンソンもカンツォーネも歌いこなす歌手なのである。大変にいいものを聞かせてもらったと思っている。もしも機会があるものなら、コンサートにも訪れて観たいと瞬間的に強烈に思った。


 この感情を持ちながら、ドラマの最後を見届けたいと思う。