昨日、料理家の土井善晴さんがNHKの桑子真帆アナウンサーと共に料理をしながら会話をする特別番組を観た。クローズアップ現代の枠で先週放送されたものだ。

 その中で土井さんは、『ええかげん』でええんですと繰り返した。土井さんが日頃から発している言葉で、気負わず楽しく日々の料理をして欲しいという想いが込められている。

 料理を始めて間もない人や、新しい料理を試す人は、どうしても料理本やネットの料理サイトのレシピを忠実に守ろうとする。食材にしてもそうだ。一つの欠けもない様に買い揃えないといけない気持ちになってしまうのだろう。

 土井さんは、「甘すぎず、しょっぱすぎず、辛すぎずで美味しくなります」と言う。食材に関しても「無ければ無いでいいんです」と。

 料理を作る人は、仕事に追われながらもきちんと作ろうとして、更に忙しくなり、やがて時間を切り詰めて、手間を切り詰めて、終いに作ることをやめていく。味も材料も「ええかげん」で良く、ただ作るときは穏やかなゆったりとした心持ちで作って欲しいと言う土井さんの気持ちがじんわりと伝わって来る。

 「ほら。目玉焼きは弱火で焼くとやっぱり違うでしょ。白身がふんわりする」と穏やかな言葉と共に微笑む。効率と反対側にある、料理をする時間を楽しむことをして下さいと言ってくれている。


 僕は若い頃に土井さんの料理本で基本を覚えた。ある程度覚えてからは、レシピを殆ど見ることなく料理をする。全く初めての料理でもだ。味を想像し、味見をしながら作ってゆく。


 そんな僕の料理との向き合い方を認めてくれている様で嬉しいと共に、人心地ついた感じがする。


 土井さんは料理の師であると共に、人生においての優しい先輩である。