暑い。年々暑さが増している感じだ。地元青森のニュースでも、6月の平均気温が観測史上初めて20℃を超えたと報じていた。また、東京では6月中の真夏日が16日もあったとの驚きの報道が流れていた。しかし、暑いと言ってあっさりしたものばかりを食べているわけにはいかない。エアコンの効いた店内で、がっつり焼肉など行きたいものだ。


 青森市の老舗の焼肉屋さんが、惜しまれながらもおよそ4年前に閉店した。繁華街にあり、1Fと2Fを合わせると15組ぐらい、4人だとざっと60人は入ろうかという立派なお店だった。

 我が家では、営業初めの1月2日に毎年お邪魔して焼肉を満喫した。ちょこっとランチで焼肉を食べたり、お義母さんと4人で食べに行ったりもするが、妻と娘と3人で訪れるお正月の一晩の焼肉は特別で、これを持ってして我が家のお正月だと言っても過言では無かった。

 我が家では、大分前から予約をし、肉も注文しておく。お肉は、カルビを5人前、牛タン2人前、ホルモン1人前。そして、妻と娘が2人で分け合って食べる卵スープとビビンバ。僕はご飯ものは食べない。ビールさえあれば大丈夫。

 この夜はとてつもなく混む。追加で肉を注文してもなかなか来ない。一度その焦(じれ)ったさを経験して、翌年以降は必ず席の予約の際にさっきの注文を済ませておく様になった。

 他の席の人達はなかなか来ないお肉を待ちながら、首を回して背中をよじらせて厨房の方を探り見る。ところが我が家の席には、次から次へと注文したお肉が届く。おそらくは、何であそこの席にはお肉がすぐ来るんだろうとと訝(いぶか)しんでいた事だろう。

 安いのに美味しい焼肉。その理由は肉をカットするご主人だ。ひとりで全ての肉をカットし皿に並べて提供する。まさに職人の技で美味しいお肉を安く食べさせてくれていたのだ。そのご主人が亡くなったために已む無く閉店した。実は、以前女将さんから、ひとりで切ってるから時間がかかるのだと聞いていた。また、ご主人が続けられなくなったら店仕舞いするとも。


 その後、恒例の正月2日の焼肉は食べていない。他のお店でと言う事も全く考えない。


 美味しくて懐かしい、そして寂しい焼肉の思い出である。