少年の頃、見たい夢があったら寝入る前にずっとその事を考えていればいいという事を聞いて、何度か試したことがある。しかし残念ながら上手くお目当ての夢に巡り会えた記憶がない。何度か試す内に意味が無いんだと思うようになり、やがてその方法に甘えることはなくなった。

 逆に、辛かった経験や思い出は見たくも無いのに現れる。高校生の時に赤点を取って再試験をした時の夢は、何度受けても駄目で先が見通せないまま目が覚める。また、仕事で得意じゃなかった分野に悩まされ続けるとか。大変だった時の記憶は、乗り越えてもまだ心の奥底に潜んで試練を与えてくる。困ったものだ。

 人は睡眠中に、その日にあった事柄を関連する短期的記憶や長期的記憶を呼び起こしながら整理すると言われている。その際の映像的なものを目が覚めた時に覚えているのが夢だとも言われている。脳が勝手に整理している時の内容に、もっといい夢にして欲しいとか、辛い時の話はやめてくれとかこちら側の望む方向に何とかしようとするのは、そもそも違うという事になる。

 夢は、脳が出来事を整理している時の偶発的なストーリーと映像だと言ってしまえばそれまでの事だが、それだと味気ないし寂しい気がする。


 寝ている時に見る『夢』も、将来に希望を持って進むために自ら描く『夢』も同じ字で書き表す。


 中身は良いに越した事がないし、何ならよりロマンティックであって欲しいと思う。


 『夢』なんだから。