東京都内で数年前から行われている『夜さんぽ』というイベントがある。NHKの朝のニュースの中のトピックスで紹介していた。集まった人たちは3人ほどのグループに分かれて、東京タワーを見上げる夜の公園を2時間ほど散歩をし、会話をする。
職業も地位も本名さえも明かさなくてもいい会話は、心の奥底にある思いや悩みを他人に話しやすく、気持ちの整理がついて心が軽くなるという。そして、日頃から『人に伝える』ことが出来るようになってゆく。
悩みや心の中に溜め込んだ想いは、募り募ると自らの心を蝕(むしば)んでゆく。誰もが経験する、もしかしたら何度も経験する辛さではないだろうか。
2年ほど前、僕は仕事が辛かったずっと昔の事を初めて妻に話した。誰にも話せなければどうするか。結果、この場から消えようとする。流浪の民となるか、障壁となっている相手を排除するか、はたまた自分を排除するか。
そんな辛い想いは2年ほど続き、会社に出る前には吐いたりもした。妻も変だなと感じていた様子だったが、僕は心の中を一度も明かさずに何とか切り抜けた。
その時の心のあり様を妻に初めて伝えたのだ。こんな思いになった事があったんだよと。僕は気持ちが軽くなった。もう過去の話なのに、楽になった。人として当然持っている弱い部分を伝えられたのだ。やはり、分かってもらえることは心の澱(おり)を流してくれる。
これからも妻の話をゆっくりと聞く様にしようと改めて思う。そして自分でもこまめに伝えていこうと思う。
残りの人生、常に一緒に暮らす相手なのだから。