お陽さまの光をまとった白いレースのカーテンが、ふんわりと膨らんでひととき立ち止まったかと思うと、時間をかけてゆっくりとしぼんでゆく。時には膨らみかけた瞬間にカーテンの裾の端が小さく弾けて、緊張が解けたようにまたしぼんでゆく。揺れるカーテンは心地よい風を感じさせる。

 NHKで終盤を迎えているドラマ『しあわせは食べて寝て待て』でのひとコマである。桜井ユキさん演じる主人公が膠原病の症状で起き上がるのが辛くてソファーに横になっている時に、開け放しの隣の部屋のカーテンが揺れている。カーテンを膨らませている風に乗って、大好きなお隣さんの会話が聞こえてきて、訝(いぶか)しげに頭をもたげた彼女は、ほっとした表情で浮かべてまた枕に頭を載せる。

 膠原病の辛さを表しつつ、心地良い風と優しいお隣さんに包まれてまた一休みするという、わずか15秒ほどのシーンだが、とても心に残る。


 僕は仕事のストレスで、行動を起こすことに時間を有する時期が波のように行ったり来たりしたことがある。病院へ行った事もないし自分の症状から何かの病気を疑っていたわけではないが、そういう時期があった。

 そういう事は誰にでもあるのではないかと思う。たかだか5分の人もいれば、1時間の人もいるだろう。時には午後の時間の殆どを無駄にしてしまったという事もあるかもしれない。


 そんな時、窓を開けてさえいれば、風が吹き込みカーテンが膨らみ、近くの柔らかい会話が心地良く耳に届くかも知れない。


 いいと思う。少しくらいゆっくりしても。