お彼岸には『おはぎ』を食べ、お正月にはお餅やお雑煮を食べる。同じ様に、お花見に出かけた時にも、その土地その土地でのグルメがあるのではないだろうか。そして、その中でも人によって好きなものが違ってくる。

 お花見の出店グルメだと、屋台焼きそばに、青森ならではの生姜味噌おでん、そしてお好み焼き。僕が小さい頃から変わらないグルメだ。

 弘前公園の名物といえば、黒こんにゃく。『ジャンボおでん』と銘打っていたかもしれない。大きめのこんにゃくを丸々煮込んで味と色を染み込ませた逸品だ。僕にとってはカロリーがほぼ無いのも魅力的。

 新しいところだと、嶽きみ(『だけ』地域のとうもろこし)の天ぷら。嶽きみは県内随一の甘くてみずみずしいとうもろこし。これを削いで、薄い衣でさっとあげるのだからたまらない。カップに入れて一切れ一切れを爪楊枝で刺して、ふうふうしながら食べる。弘前公園内でも何店舗か出ていると思う。今では居酒屋でも食べられる定番の料理だ。

 そして、青森市ならではのお花見グルメがある。青森市で育った子供たちは、合浦公園でお花見を楽しむ。その出店の中に、『飴せんべい』という看板がある。特に調べたわけでは無いが、おそらくは青森市内のみで供されていると思う。

 2枚のごま煎餅を腹合わせにして、その間にたっぷりの水飴を挟む。ごま煎餅の素朴な風味とパリッとした食感、水飴の自然な甘味がたまらない。噛み割ってピョーンと伸びる水飴を指にも顎にも服にもつけない様に上手に食べるのが妙技である。


 津軽藩の領内には、古くから、澱粉と麦芽から甘味を抽出した、砂糖を使わない水飴が製造されていた。製造を担っていたのは佐賀から出て津軽藩に使えた武内家で、藩政が終わるとともに創業家の武内家が青森市に移り、津軽飴の製造を続けて今に至っている。

 ねぶたの威容を蓋にあしらった赤く丸い水飴缶は子供の頃から目にして食べていたものなので、今目にしても、ここにしか無い懐かしさが込み上げてくる。


 先人の知恵と技と、家業を続けてこられた努力に感謝したいと思う。