京王電鉄井の頭線で、ある車掌さんの車内アナウンスが話題になっている。肉声での言葉がけは温かく気遣いに溢れていると評判だ。京王電鉄のホームページにも、癒されたとか、助かったとか、お礼の気持ちが多数寄せられていると言う。

 NHKの朝のニュース『おはよう日本』で取り上げられていたシーンでは、車内に目をやりベビーカーの存在に気づくと「ベビーカーのお客様はゆっくりとお降り下さい。何よりも大切なのはお子様の安全です。待っていますので、ゆっくりと降りてください」と語りかける。

 また、発車間際に走ってくる人を見かけると「そんなに走らなくてもいいですよ。待ってますから」と語りかける。

 そして、真新しいスーツ姿に気付くと「新入社員の皆様は、これから大変なことがあるとは思いますが、頑張ってください。応援しております」と。

 親が子に、先輩が後輩に、おじさんが近所の子達に語りかけるような、普通の言葉だが、今の社会ではこの様な言葉がけを躊躇してしまいがちだ。僕も同じで、語りかけることで煩わしいと思われないか、見知らぬ人に話しかけるなんて危ない人じゃ無いかと思われるのが鬱陶(うっとう)しくなってしまっている。


 当然場違いな場合もあるだろうが、優しい声がけは昔はいくらでも街に溢れていた。


 人と人との関係が希薄になっている時代。この車掌さんの語りかけがヒントなのかも知れない。