昔々、あるところに綺麗な娘さんがおっててのぉ。その娘さんに会えないものかと、沢山の若者が娘さんの通りそうな場所を行ったり来たりしたもんじゃ。
みたいな。
手紙の時代でもラジオの時代でも、はたまたデジタル社会と言われている現代でも、好きだったり憧れていたりする相手のことを『見たい』とか『話したい』と思うことは変わらないと思う。
多感になる中学生の頃が思い出に残っている人が多いのではないだろうか。同学年のクラスが並んでいる廊下で休み時間にすれ違う。その時に、何となく相手の子が顔を上げたとかこっちを見たとか。また、普段は触れ合うことのない先輩と階段や渡り廊下ですれ違うだけでドキドキするとか。
全てが甘酸っぱく鮮明な思い出。憧れる気持ちや、恋焦がれる気持ちを感じて、年々心を育んで。けれども、その思いが全て成就するわけではない。
そんな思いを繰り返す中で、やがて大人になる。そして、新しく出会った人のことを少しだけ考える様になる。ときめきは思春期のそれとは種類が違うとしても、何だか気になる人が現れる。気がついたら、その人がそばにいるのが当たり前で、会えない少しの時間に寂しさを覚える様になる。
今、学校では別れの季節を迎えている。それぞれの想いを胸に秘めて次のステップへ。
悩ましくも素敵な明日がきっと待っている。