ほとんどの漢字はひと文字ひと文字に意味があり、初めて触れた熟語でも、知っている漢字の組み合わせであれば、ある程度意味を想像できる。アルファベットは表音文字なので、大きく違うところだ。


 10年ほど前に、『障がい』という表記に初めて気づいた。それまでは『障害』という表記だったので、ひらがなを使っていることにどうしてだろうと疑問を持った。そして調べてみた。

 『害』の字は『悪い状態』という意味があるので、身体に不自由なことがあるという意味では間違ってはいない。ただ、『災害』や『被害』など、僕たちに悪い影響を及ぼすものという意味をも含む。

 僕たちは『害』の字に後者の意味合いを強く感じていないだろうか。だとすれば、身体に不自由なことがある人たちにこの字を当てることは、僕たちに良くない影響を及ぼす人たちというニュアンスを伝えかねないとの配慮から、2000年以降、『障がい』の表記が自治体を中心に広がってゆく。僕は現段階で『がい』の表記を歓迎する。


 歴史を紐解くと、表記には古来『障碍』と『障害』があったのだが、明治以降に『障害』で表記する流れになった。そもそも『碍』とは差し障りのある状態を意味するので、身体に不自由なことがある人たち本人が普段の生活に不便を感じる状態を表す字としてはふさわしい。しかし、常用漢字ではないために、この表記が公に使われることはない。文化審議会国語分科会は、2021年に常用漢字化を見送っている。その理由は普段余り使われていないからというものだったが、僕は納得できなかった。大切なのは結果ではなくて、不快にさせたくないという議論をきちんとしたかどうかだと思う。


 最後に、兵庫県宝塚市では市政に関わる部分で、2019年から『障碍』を使い現在に至っていることを書き添えたい。