なでしこリーグに所属するヴィアマテラス宮崎というチームをめぐるお話。

 元日本代表の齊藤夕眞選手はチームのエースとして活躍し、3年続けて所属リーグの階段を駆け上がる原動力となり、なでしこリーグ一部のMVPにも輝いた。小さな町の子供からお年寄りまでが熱烈に応援していた。春は選手の移籍が話題に登る。仲の良い84歳のおばあちゃんは、齊藤選手が移籍するはずはないと強く信じている。

 実はこの冬、齊藤選手にWEリーグ(プロ)からのオファーが届いていた。彼女はあたたかい地元の人たちとずっと一緒にいたいと思いながらも心は揺れていた。そして、シーズン最後の試合のあと、移籍してもう一度サッカー選手としての高みを目指すことを選択する。

 ホームページで移籍を知ったおばあちゃんは、残念な想いが溢れて涙を流す。


あの子は残るよと思うこと

皆さんと居たいと思うこと


居なくなるのが寂しいということ

第二の故郷だと思えること


応援するということ

上を目指すということ


歳をとるということ

未来があるということ


 おばあちゃんの家に挨拶に来た齊藤選手は、「応援するから頑張って」の言葉に素直に喜び、おばあちゃんがくれた漬物を美味しそうに食べる。


 おばあちゃんの目に、もう涙はない。