国内では、今季最大級の寒波がようやく通り過ぎようとしている。連日、降雪や積雪の多い所や立ち往生が発生したなど、細やかに報道されていた。これから徐々に春に向かっていく事だけは確かなので、僕も来たる春を楽しみに待ちたいと思う。


 ここ数日賑わっていた話題がある。大谷翔平君の元通訳、水原一平氏の裁判所での量刑の言い渡しに関する報道だ。出廷して来た彼に報道陣が群がり、マイクを向けて「大谷さんに対して何かひとことありませんか」みたいな事を聞いていた。ナレーションでは、「報道陣の問いかけに何も答えることなく裁判所に入って行きました」と伝えていた。

 質問をすることも必要で、何か答えてくれるのであれば聞いてみたいと僕も思う。しかし、答えないことにより「太々(ふてぶて)しい」「反省してない」と思う人もいるだろう。


 一旦立ち止まって考えて欲しい。


 罪を犯そうがどうしようが、報道陣の質問に必ず答えなければいけないということはない。罪は裁判によって裁かれ、下された判決、量刑を受け入れることによってのみ公的に償われる。当然、裁判とは別に、被害者である大谷翔平君には手紙を出すなどして謝罪することもあるだろう。僕たちは被害を受けてもいないし、事件とは一切関わりがないのだから、彼から全てを聞き出せなくても当たり前なのである。

 歩いてくる彼に向けられたマイクは胸元に押しつけられるかのようで、横にずれてかわそうとしても、記者は身を翻(ひるがえ)してまた胸元に押し付けるかの様にマイクを向ける。誰かひとりがつまずくと怪我人が出そうな位の距離感で詰め寄る。


 沢山の報道陣が詰めかけることによって、僕たち視聴者はこの事件は重大なのだと思い込みがちだ。そして、何も答えない相手に対して、負の感情を持つ。たまに、表立って警察や検察が動いた様子が見られない時点から取材陣が詰め掛けることがある。そして、悪くないんだったら出て来て説明しろと言わんばかりにカメラを向け続ける。

 僕はこういう取材や報道のあり方には賛同できない。集まるのはいい。マイクを向けるのも、まあ良しとする。しかし、無理やりは良くないし、答えなかったことを暗に誹謗するのはナンセンスだ。民法各社は、なぜNHKの様に事実を正確に伝えることだけに集中できないのか。とても残念だ。


 僕は、こういう取材や報道の仕方を、視聴者の感情をある一方に持っていこうとする『扇情的報道』だと思っている。