今年、大河ドラマで描かれる浮世絵の世界。江戸の版元の代表格である蔦屋重三郎が人気の絵師を発掘し育ててゆく。葛飾北斎や喜多川歌麿などそれぞれの画題と画風で次々とヒット作を描き上げる絵師たち。

 幕府のお膝元でもある江戸で、幕府の統制下で出版された浮世絵は、庶民の手の届く娯楽として花開く。版元が絵師を発掘し、描かれた絵は版木に掘られ、色ごとに擦り上げる刷り師へと渡る。そして完成された浮世絵は問屋を経由して店先に並ぶのである。

 彫り師が絵師の描いた世界を板木に写し取るのは至難の業だろうし、刷り師には彩色の顔料の濃淡や色刷りごとの位置ズレが許されない緻密な技が求められる。彫り師や刷り師はそれぞれが高い技術を持ち、出版されるまでの工程はまさに一大産業と言って良い。

 描くのは人気の歌舞伎役者や吉原の遊女たち。そして葛飾北斎の富嶽三十六景。いずれもデフォルメが施された世界中どこにも存在しない芸術性を持つ。

 その浮世絵はポスターやプロマイドのようなものなので、海外に大量に運び出された。現在も世界中で大人気で、ゴッホが大の浮世絵ファンであり大きな影響を受けたことは有名である。


 一点ものの絵を描く絵師も存在した。その中心は江戸時代以前から続く狩野派と琳派であろう。

 琳派では尾形光琳の『紅白梅図』や『風神雷神図』が有名である。彼らは、各地の寺社仏閣、そして大名の居城や大商人の屋敷の建具などに絵を描く。

 狩野派は血縁を中心とした日本美術史上最大の絵師集団で、こちらも全国に広がる勢力と人気を誇った。

 彼らは伝統の技法を受け継ぎながら、日本ならではの風景や動物、更には中国の書物や思想を題材にした絵をパトロンの要望に応えつつ描いてゆく。大名のお抱え絵師となることも多かった。


 生まれも育ちも違う「絵」たち。日本の文化の創造性はとてつもなく柔軟だと思う。