能登半島地震が昨年の元旦に発生して一年とひと月。毎日、全ての地域の復興状況を報道することは難しい。不謹慎に聞こえて欲しくないのだが、報道に触れる僕たち視聴者も、痛みや疲れを伴いながら毎日を過ごすことは難しい。

 少しずつ進んでいる現状と、何も進まない現状。それぞれの被災者によって異なる現状。他地域に暮らす僕たちもどう関わっていくべきか。折りに触れて未だ辛い生活を強いられている人達を想起する。


 毎週土曜日、おそらく東北枠だと思うが『被災地からの声〜つぎの一歩』という番組が放送されている。30分程で、観ようと思って観ているわけではないが、流れているとそのまま観てしまう。東日本大震災の発生から3月で14年になるが、発生間もなく始まったと記憶している。

 担当は津田喜章(つだよしあき)アナウンサー。宮城県石巻市出身で、最初に青森放送局に配属後、秋田、仙台と移動して数年後に大震災を経験した。以降もずっと仙台で勤務する異例の『東北アナ』だ。

 『頑張らなくていい』とか『そんなに頑張れません』とか『無理して頑張らないで下さい』とか。彼の発する言葉には、もう少しだからと鼓舞したり、ここを乗り越えればなどと勇気づけようとする意思はない。ただただ取材した人の声と思いを、観ている僕たちに届けようとしているかの様だ。

 10年経って2度目のインタビューに応えてくれる被災者もいる。津田アナは、一回目の映像を見せながら、じっと言葉を待つ。ほとんどの場合、笑顔がこぼれ、恥ずかしそうに見つめている。時には、ご主人だったりお母さんだったりと、放送後に亡くなった誰かの映像が流れる時もあるが、懐かしいとか、こんなこと話してたんだと振り返る表情には笑みがある。悲しみだけではない、生きている実感が伝わってくる。

 その表情に触れた時、被災された方たちが少しでも前に進んでいるのだと、僕は初めて感じることができた気がする。


 能登半島地震のあとの放送で、津田アナが語った。「私たちも同じことを13年前に経験しました。もう終わったと思いました。でも、先に被災した私たちは、いずれ必ず復興に向かうという事実も知っています。今は信じられないと思いますが、どうか経験者を信じて、何とかあと少し辛抱していただければと思います」と。


 これからも『観る』ことを続けたい。