先日NHKで、民放各社のアナウンサーが集って『災害報道』についてディスカッションをした。MCはNHKの高瀬アナウンサー。それぞれが災害報道の取材中に感じたこと、改善したいと思う事を述べてゆく。


 ある局の男性アナウンサーが被災者から言われた言葉は、取材される側からすると当たり前だろうと思う事だった。

 洪水被害での事。高齢者施設で、入所者を一人一人、首まで浸かりながら、励ましながら施設の外に運び出して安全を確保してゆくスタッフ。一次報道のあと、他局も取材に群がる。その時に言われたのが『何回同じ話をすればいいの?できれば思い出したくないのに』という言葉。

 取材する側とされる側の間には、絶対的な距離がある。そこをおろそかにしてマイクを向けると、被災者は口を閉ざしてしまう。そもそも、必ず答えなければいけないと言う事はない。

 そのアナウンサーは、解決策として各局の連合取材みたいな事が出来ないだろうかと話していた。高瀬アナウンサーも、現場でたまに業界の知り合いと出会う事があるので、その時はこちらの取材は任せたと違うところに行くのもありじゃないかと話す。取材映像を遣り取りするのだと。


 僕は正直なところ、局が変わっても同じ現場の同じ人にインタビューしている事に辟易してしまう事が多々ある。災害報道にスクープを求めないで欲しいと強く思う。しかしながら、民法各局はどうしても独自情報を探し回っているように見える。


 何度も取材される苦しさ。恐怖体験を、また映像で何度も見せられる。それなのに、いくら話しても何度伝えても改善しない被害状況に、前に進む気力を失ってしまう。


 そんな被災者を助けてあげられる取材と報道とは何なのだろう。


 難しいことだとは思うが、考え続けなければいけない。