青森市にはねぶた祭りがあり、弘前市にはねぷた祭りがあり、県内各地で誇らしげに夏祭りを謳い上げる。全国各地から、海外から沢山の人達が訪れて、狂おしく高らかに祭りは弾ける。
一方、八戸市の三社大祭は神社の祭礼で、神事である。その名の通り、三つの神社の神輿を繰り出して、町組の山車行列は街を練り歩く。
先日、NHK『Dearにっぽん』の再放送で、青森県下北郡佐井村の祭りにまつわる話が取り上げられた。
佐井村牛滝地区の神明宮の神事である神楽が毎年春と秋に奉納される。46歳までの男性が執り行うしきたりなのだが、子供を含めて年々人が揃わなくなってきていた。
そんな中、故郷である牛滝地区に数年ぶりに戻ってきた家族がいた。長女の聖奈ちゃんが小学高学年で弟が低学年。その下に二人の女の子がいる。その聖奈ちゃんが、神楽に魅せられて参加したいと強く願うようになっていた。父親は娘のいじらしい程の熱意に何とか答えてあげられないものかと、仲間に相談を持ちかけた。結果、神明宮の外で行われる神楽に参加させようと言うことになったのである。
来る日も来る日も太鼓を練習し、本番を迎えた。家々を一軒一軒訪ね、5時間かけて地区内を回る。途中でマメが潰れ、父親に交代を促されても叩き続けた。隣で小太鼓を叩いていた男性は「聖奈が太鼓を叩くと気合が入る」と歓迎し、街の人たちもかっこよくて写真を撮っちゃったと笑顔で話していた。下の女の子二人の掛け声には沢山の人達が相好(そうごう)を崩していた。
御祭神の天照大神(あまてらすおおみかみ)が女性が立ち入るとやきもちを妬くという理由で女人禁制だった祭りのしきたりに風穴が空いた瞬間だ。本当に必要な事は何なのか、きちんと向き合った結果だと思う。
僕たち部外者が門戸を開放すればいいと安直に言うのは筋違いだし、無責任極まりない。地域の人達が話し合い、納得して成されなければならない変革であり、自らが決めた事柄は簡単には崩れない。
春の神楽には再び聖奈ちゃんが参加し、きりりとした姿を見せてくれることだろう。