子供の頃、お菓子には子供向けにおまけが付いているものが沢山あった。一番覚えているのはグリコのキャラメル。『ひとつぶ300メートル』のキャッチコピーが懐かしい。プラスティック製の小さなおまけで、車やバイク、飛行機などなど。男の子が故にそんなものが記憶にある。

 一袋30円で手のひら大の袋に入ったスナック菓子には歴代の仮面ライダーや怪人、ショッカーとの戦闘シーンなどのカードが入っていた。僕は集めていなかったが、熱くなって一回に二袋買う友達もいた。

 ある日、教室の教卓に髭剃り用のカミソリ刃のシールを貼った友達がいた。チャイムと共に入ってきて教卓を見た先生は、「誰だ!カミソリの刃置いたのは!」といきりたった。友達がすかさず「先生、それシールですよ」と平然と言ってのけた。冗談の通じる先生はその子を呼び出して小さくコツンと叩いてシールを剥がさせた。


 昭和の時代、おかずが足りないとか、極限、何にもないという時に助けになったのが永谷園のお茶漬けだった。鮭茶漬けに梅茶漬けにお茶漬け海苔。時代が下(くだ)ると種類も増えたと思うが、ウチでは大体鮭茶漬けだった。

 そのお茶漬けには歌川広重の『東海道五十三次』のいずれか一枚がカードになって入っていた。五食分が一袋に入っていて、カードは間に入っているため何が描かれているのかは開けてみないと分からない。

 このカードに父がはまっていた。最終的には30種類位集まったと思うが、完結はできなかった。買うのは近所の個人商店で、お使いに行かされるのは僕だ。今までに無いカードが出ると父に褒めてもらえた。駄賃をもらえるのでもなく、ただただ良くやったと言われるだけだが、嬉しかったのを覚えている。


 浮世絵カードは一旦廃止されてまた復刻したらしいのだが、集めてみたい気持ちが拭えない。


 しかし、白米を食べすぎると太るので、迂闊には買えないのである。